追龍 (2017):映画短評
追龍 (2017)ライター4人の平均評価: 3.8
ソウルフルな実録ノワール大作
128分の長尺ながら、香港公開時「ウォン・ジン(バリー・ウォン)監督のくせに!」と言われたほど、おふざけ一切なし! 撮影監督でもあるジェイソン・クワン監督のセンスも含め、作り手の魂を感じさせる実録ノワール大作である。悪名高き九龍城で、裏社会をのし上がっていく初競演となる2大スターの対照的な“悪”の魅力が炸裂。全編70`sファッション&小道具、ダニー・ハサウェイ「The Ghetto」にEW&F「Shining Star」といったR&Bが彩り、いろんな意味でソウルフル。また、フェリックス・ウォンやベン・ンなど、韓国映画に負けぬ“いい顔した”脇役陣が顔を揃え、香港映画の醍醐味を堪能できるはず!
物悲しい余韻に酔いしれる香港ノワール
60年代香港を牛耳っていた汚職警官と黒社会ボスの栄枯盛衰は、時代に乗った男たちのたくましさを感じると同時に物悲しい余韻を残す。友情や恩義で結ばれながらも、常に相手を疑わななければならない人生とはこれいかに! 当時のファッションや街並みの再現にしっかり気配りしていて、悪名高き九龍城砦内部や、その真上をカイタック空行に向けて降下する飛行機のアプローチなどの絵面にオールド香港への郷愁たっぷり。D・イェン&A・ラウという2大スーパースターを味わい豊かな個性派が支え、素晴らしい香港ノワールに仕上がっている。さらに印象的なのがアンディの若々しさ。どんなアンチ・エイジングやってるのか知りたい。
ある種の様式美
ある種の様式美ともいえる香港ノワール。
ここまで、熱量があってスタイリッシュさがないのもちょっと久しぶりでかえって新鮮です。
今まで共演がなかったのが不思議なくらいのドニー・イェンとアンディ・ラウですが、変に食い合いこともなく思っていた以上の相乗効果を生んでくれます。
基本的に悪人たちの物語なのですが、なんとも憎めない人たちばかりです。九龍城など今はもうない香港の猥雑さもいいアクセントになっています。
ドニーさんの強くないアクションも見どころです。
ドニーさん七変化、不変のアンディ。そして遥かなるノスタルジィ
英国統治時代をメインに描かれるので、どうしたって「香港の今」を重ねて切なくなる。頭上を行く巨大な飛行機、魔窟のごとき九龍城という光景の再現にノスタルジーがくすぐられ、その魔窟内でドニー・イェンをワンカットで追い、要所で炸裂する肉体技に惚れぼれ! ヅラ(ですよね?)や特殊メイクも駆使して時代の変化を体現するドニーに対し、若き警官もピチピチな容姿で演じる50代、アンディ・ラウの違和感のなさにびっくり。
数百人が入り乱れる、マンガのような喧嘩シーンや、場面の切り替えにR&Bが流れて過剰にカッコよく見えたり、全編「ケレン味」を堪能させつつ、こういった香港発の映画が今後、作られるのか一抹の寂しさも。