アイヌモシリ (2020):映画短評
アイヌモシリ (2020)ふと視線を動かすと、別の世界が出現している
出演者の大多数は俳優ではなく、日々の暮らしを映し出す映像の手触りはずっとドキュメンタリー映画の生っぽさのままなのに、ふと視線を動かすと、そこに日常とは別の世界が出現している。そういう瞬間が、一度ではなく、何度もある。その2つの世界が地続きに続いているという感触に魅了される。
この物語が、少数民族の現在よりも、ひとりの14歳の少年の成長を描こうとするところもいい。少年はさまざまな体験をして、「自分が周囲に押し付けられていると思っているもの」に素直に向き合うことが出来るようになる。すると世界が変わっていく。北の大気がいつも冷たく澄んでいる。
この短評にはネタバレを含んでいます