樹海村 (2021):映画短評
樹海村 (2021)ライター4人の平均評価: 3.3
日本的な村社会の不条理を炙りだす現代の怪談
昨年の『犬鳴村』に続く「恐怖の村」シリーズ第2弾。「富士の樹海」の奥深くに謎の村が存在する…という都市伝説には犬鳴村ほどの説得力を感じないし、災いと惨劇を招く「コトリバコ」と樹海村の因果関係もいまひとつよく分からないものの、呪いの連鎖によって日本的な村社会の不条理や閉塞感が炙りだされていく様は素直にゾッとするものがある。そういう意味で、現代の「怪談物語」として正しく成立していると言えるだろう。清水崇監督の恐怖演出も前作に引き続いて快調。今回は音響効果の上手さも手伝って、より恐怖の密度が濃くなっている。
今回は『食人族』オマージュだ!
前作『犬鳴村』でかなりのインパクトを残した大谷凜香が、同じYouTuber役で再登場する遊び心など、ちょっとしたシリーズものとしての醍醐味もありつつ、『犬神の悪霊』のオマージュだった前作に続き、今回は『食人族』オマージュ大会と、いい意味でヤバい方向に行っている。しかも、暗闇から國村隼が出てくるだけで、ヤバい雰囲気しかしない! オカルト芝居も難なくこなす山田杏奈はさすがの一言だが、今回も小寺さん(工藤遥)や神尾楓珠など、若手陣の使い方が難アリなのは悔やまれる。また、ドラマ性を重視したい気持ちが分かるが、気軽に観たいホラーだけに、もうちょいコンパクトにまとめてほしかった感アリ。
今度の呪いは横に、横に伝染する!
『犬鳴村』に続く清水崇監督の呪縛ホラー第2弾は、地図にない“村”の恐怖を描くというコンセプトはそのままに、より混沌とした恐怖に舵を切る。
惨死描写はもちろんのこと、重要なキャラクターと言っても過言ではない、うっそうとした“森”のビジュアルもインパクト十分。逃げ場のない迷路の緊張が生々しく伝わってくる。
『犬鳴村』は一家に昔からかけられていた限定的な呪いに縦の法則性が見られたが、本作はその点が異なる。清水監督はコロナ禍の自粛時に脚本を書いたとのことで、伝染という横の法則性はある意味タイムリー。家族の業ではなく、人間の業をとらえている点で興味深い。
パワフルなシリーズ第2弾
明確な呪いの因果関係を描くようになった清水崇監督の新境地ともいえる呪いの村シリーズ第2弾。
前作『犬鳴村』を上回るパワフルな演出が冴えます。
コロナ禍で制限も多い撮影体制であったと思いますが、それを感じさせることはありません。
またWヒロインの山田杏奈と山口まゆに加えて工藤遥、神尾楓珠、倉悠貴といった若手俳優が揃いました。この辺りの純粋なホラー映画らしくて好感が持てます。
本作のヒット次第ではありますが、毎回これだけのパワフルさを見れるのであれば、この呪いの村シリーズはまだまだ見てみたいと思いますね。