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聖なる犯罪者 (2019):映画短評

聖なる犯罪者 (2019)

2021年1月15日公開 115分

聖なる犯罪者
(C) 2019 Aurum Film Bodzak Hickinbotham SPJ.- WFSWalter Film Studio Sp.z o.o.- Wojewodzki Dom Kultury W Rzeszowie - ITI Neovision S.A.- Les Contes Modernes

ライター4人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4

森 直人

ポーランド映画の新たな傑作

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

めちゃくちゃ面白い。ヤン・コマサ監督の弁によると『裁かれるは善人のみ』(14年)と比較されることが多いらしいが、筆者は『汚れた顔の天使』(38年)+『ディア・ドクター』(09年)ではないかと思った。犯罪者/神父のダブルカード。「なりすまし」が田舎の小さな村に行く。そこで能力と制度などの矛盾が露わになる一方、ポピュリズムの危うさも示す。全てが両面提示の鋭さ。

コマサ監督の2020年の新作『ヘイター』はNetflixで鑑賞できる。やはり嘘つきだが、ある種のパフォーマンス能力に長けた青年が主人公。『聖なる犯罪者』とは世界の秩序と闇へのアプローチを変えた別ヴァージョンといった趣で、こちらも必見!

この短評にはネタバレを含んでいます
猿渡 由紀

モラルの矛盾を問うパワフルなストーリー

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

いつかは絶対バレるに違いない嘘をついている主人公ダニエル。そんな彼の行動に、終始、ハラハラさせられ、また、笑わされる。しかし、そんな中で、映画は、この小さな街に潜む嘘と偽善を明かしていき、神と語ることができる権利を持つのは誰なのかという大きなテーマを問いかけていくのだ。自分の中に隠れていた才能に目覚め、それを謳歌しつつも、ダニエルが完全に成長して違う人になったりしないところもリアルで共感できる。ダニエルを演じるバルトシュ・ビィエレニアの、個性的でどこか強烈な表情も目を惹きつけるし、シネマトグラフィーも美しい。ラストシーンは、ビジュアル的にも、ストーリー的にも、心に残る。

この短評にはネタバレを含んでいます
山縣みどり

なりすまし聖職者が信仰の本質をつく

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

美女にバカにされて思わず「自分、神父ですから」と見栄を張った前科者ダニエルが分断した村を再生、というおとぎ話のようでいて苦さが残る贖罪ドラマ。最初から最後まで、主人公が本当に生まれ変わったとは思えない点がリアルだ。演じるP・ビィイレニアが悪人から聖人までを巧みに演じわけていて、見事! 聖職者として尊敬を集めるうちにその気になった青年が型破り神父として善行を始めるが、ここで問われるのがキリスト教徒としてのあり方。「罪を許し、人を憎まず」は言うは易く、行うは難しだ。そして敬虔な村人に信仰の本質を思い出させたダニエルが得たものは? 信じるものは救われるはずだが、そうでない場合もあるね。

この短評にはネタバレを含んでいます
平沢 薫

主人公の見開いた目が問いかけ続ける

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 主人公のいつも何かに驚いているかのように見開かれた目が、ずっと世界に問いをなげかけ続ける。この映画を見るということは、そのまなざしを見つめ続けるということだ。
 主人公の瞳の冷たく薄い緑色は、彼を取り巻く世界の色と同じ。その冷えた世界を歩む主人公の前に、もしもここでこの人が許したら、彼は迷い込んだ道から歩み出ることが出来る、変わることが出来る、という機会が何度も出現する。しかし、そのたびに許しは与えられず、そのために彼はそこから脱出できない。人々の不寛容のために、彼だけでなく、誰も救われることがなく、世界が変わることもない。そんな世界が、冷たく燻んだ薄い緑色の大気の中に静かに描かれている。

この短評にはネタバレを含んでいます
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