ヘルムート・ニュートンと12人の女たち (2020):映画短評
ヘルムート・ニュートンと12人の女たち (2020)ライター2人の平均評価: 4.5
フェミニズムとアートの関係の「その先」
#MeToo以降との関連が意識された内容。20世紀まで賞賛されてきたセクシュアルな表現に新たな批評のメスが入り始めた時代。ならばH・ニュートンは、もうナシか? そこで彼と仕事した女性の側に直接意見を聞くコンセプトは、「政治的な正しさ」の徒な尖鋭化への解毒剤的なアンサーとなるだろう。
今は「ミューズ」との概念が搾取的として葬られようとしているが、本作は表現の現場で生まれるパワーゲーム的な関係を再定義する為のヒントも与えてくれる。炎上案件もむしろ「解釈する側」の思考や精神を強く映し出すことがよく判る。その点で男性優位も含め表現の多様性を捉える、I・ロッセリーニのフェアな分析には特に感銘を受けた。
論議を巻き起こした写真家の素顔が魅力的
エロティックなのにユーモラスでもある写真で一世を風靡した写真家のドキュメンタリーは、H・ニュートンの茶目っ気溢れる人となりや芸術性がよくわかる作品だ。ニュートン自身のインタビューに相変わらず美しいナジャ・アウマンや怖さが減ったグレイス・ジョーンズといったミューズやアナ・ウィンターらの証言が加わり、彼の考える美へのこだわりが明らかになっていく。大事なのは胸と脚と高慢な態度と言い切るニュートン潔い! 女性を性の対象としているとスーザン・ソンタグに非難されるが、高身長のヌード女性が睨みつけるような顔でポーズを取る写真のメッセージはそんな単純なものではなかったこともよくわかる。