ヒルビリー・エレジー -郷愁の哀歌- (2020):映画短評
ヒルビリー・エレジー -郷愁の哀歌- (2020)米社会の分断を浮き彫りにする白人貧困層家族の歴史
アメリカ東部の山岳地帯に暮らす貧しい白人住民(=ヒルビリー)をルーツに持つ若者を主人公に、親子代々に渡って受け継がれてしまう貧困の連鎖を描いた実話ドラマ。生まれもって背負ってしまった経済格差に教育格差、そして地域格差。山奥の故郷を捨てて町へ出た祖父母も、頑張って看護師資格まで取った母親も、結局は見えない社会の壁に希望を打ち砕かれていく。個人の努力だけでは変えようのない現実。衰退の一途をたどる田舎社会。そうした中、親族で初めてエリートへの切符を掴んだ主人公が、故郷に残した家族と自分の将来の狭間で苦しみ、いかにして負の連鎖を断ち切るべきなのかが問われる。米社会の分断を理解するうえでも必見だ。
この短評にはネタバレを含んでいます