くれなずめ (2020):映画短評
くれなずめ (2020)ライター3人の平均評価: 4
軽やかに、しかし敬意をもって、死と向き合う好編
友人の結婚式のために久しぶりに集まった高校時代の親友6人。集まれば、あの頃のままバカに戻れる、そんな彼らのグタグダな友情ドラマと思いきや、ほどなく違和感に気づくだろう。
彼らがこの違和感を直視し、それを乗り超えるまでの物語……というと、難しそうに思えるかもだが、松居監督はこれをコメディとてして描いており、その軽妙さに乗せられる。
親友との死別とどう折り合うか? ともすれば重くなりがちなテーマだが、笑いやファンタジーの効果により気持ちよく突き抜ける。街と自然が混在する地方都市の風景がこれまた心地よく、同時に現実味を醸す効果も。ボンクラ男子にふんした成田凌ら俳優陣の妙演も光る。
何が起こるか分からない人生だから、その瞬間を精一杯味わいたい
久しぶりに会った高校の同級生と言葉を交わす瞬間に過去に戻っていく感覚に覚えあり。「あるある」と思わせるシーンや台詞が次々に登場し、懐かしいようなこそばゆい思いが込み上げる。しかし過去の友情を再確認し、前に進む青年像という単純な話ではなく、切なさや理不尽な人生への怒りが内在する奥行きの深い物語だった。人生って、本当に何が起こるか分からない。自身の体験をもとに、その時に感じたであろうさまざまな感情を見事に集約させた松井監督の筆力に感服する。主演の成田凌は出演作ごとに魅力が増しているし、個性派の浜野健太や藤原季節がとてもいい味を出している。初めて見たが、目次立樹はいいバイプレイヤーになりそう。
少し不思議な、“男子6人かしまし物語”
披露宴と二次会のあいだという、あるあるな3時間に展開される、少し不思議な“男子6人かしまし物語”。脱力系の日常コメディとして始まり、いちいち突き刺さるセリフやノスタルジーだけでなく、いかにも松居大悟監督的ともいえる変態さ&ヤバさも注入。そのため、監督デビューから10年、誰もが認める松居監督作の集大成といえるだろう。実年齢はかなり離れてる6人の役者のバランスでなく、実質ヒロインである前田敦子の使い方も見事。藤原季節だけでなく、テーマや展開など、『佐々木、イン、マイマイン』と被る部分もあるが、すべてをさらけ出すことでの共感度など、仕上がりに関しては、断然こちらの方が上!