アンチ・ライフ (2020):映画短評
アンチ・ライフ (2020)ライター3人の平均評価: 2.3
B級ジャンル系映画マニア向けのSFパンデミック・ホラー
人類が絶滅の危機を迎えた近未来。新天地の植民惑星を目指して旅立った巨大な宇宙船の中で、人間の肉体を乗っ取って狂暴化させる未知の生物が次々と繁殖していく。さながら『エイリアン』×『バイオハザード』。『遊星からの物体X』や『ザ・グリード』などを彷彿とさせる要素も。なので、基本的にストーリーもビジュアルも既視感ありまくりだ。オリジナリティにも新鮮味にも欠けることは否めないし、セットの規模もエキストラの数もやたらとスケールが小さいし、肝心のVFXも見るからにチープなのだけれど、なぜこの映画にブルース・ウィリスが…?という点も含めて、B級ジャンル系映画を愛する好事家であれば一見の価値ありだろう。
『エイリアン』シリーズへの愛情を買う
宇宙船内に紛れ込んだ強暴な未知生命体からのサバイバル……という展開はSFホラーの定石。そこにウイルスによる地球の終焉という基本設定を加味した本作。
新たな安住の星に向かう人類に異星生物が襲いかかり、人間は後戻りできず、生き延びるために戦うのみ。限定空間のサバイバルという基本を、まずはきっちり押さえている。
人間の愚かさへの風刺や船内の冬眠設定などのディテールが浅く、丁寧に組み立てていれば……という歯がゆさはあるが、『エイリアン』シリーズへの愛情が詰まっていて、それだけでお腹いっぱい。近年Bの線でイイ味を出しているB・ウィリスの『アルマゲドン』的アンチヒーローぶりも好意的に受け止めた。
疫病が蔓延する地球を捨てる日が来るのかも
謎のウィルス感染で人々が死にゆくなか、非感染者がニューアースへ移住する設定がコロナ禍の今、まんざら絵空事でもない。ただし、宇宙船で起こる事件は『エイリアン』の下手くそなパクリにしか思えないというかなりなB級珍品。ツッコミどころが多く、監督の意図とは思えない笑いがあちこちに!? 思いがけずにヒーローとなる主人公ノアを演じるC・カーズリーが全く魅力がなく、彼のメンター的存在となるB・ウィリスに『アルマゲドン』的活躍を期待したが、尻つぼみ。さらに扱いが酷いのがT・ジェーンで、見せ場が全くない。なぜ出演したのか理解に苦しむ。好きな人はいると思うが、両手をあげて「おすすめ!」とは言えない。