僕が跳びはねる理由 (2020):映画短評
僕が跳びはねる理由 (2020)ライター2人の平均評価: 4.5
自閉症者を理解するための手助けとなる作品
世界30か国以上で翻訳出版された自閉症者による同名エッセイをベースに、世界各地の自閉症者とその家族の生活を丹念に取材しながら、彼らが何をどう考えて世界をどのように見つめているのかを、健常者にも分かりやすいように紐解いていく。過去には悪魔憑きや呪いなどと関連付けて忌み嫌われ、ほんの数十年ほど前でも精神的な欠陥と見做されていた自閉症。なぜそんな誤解や偏見が生まれてしまったのか、彼らを理解するにはどうすればいいのか。自閉症者の娘を持つ母親が語る「正しい母親であろうとするあまり、子供のことを見ていなかった」という言葉が強く印象に残る。異質なものを排除することのない社会を目指すうえでも必見の映画だ。
自分が思う“普通”は決して、“普通”じゃないと理解しておきた
自閉症の男女とその家族を追いながら、当事者の日常や彼らを取り巻く社会状況が綴られる。東田直樹が14歳の時に書いたエッセイからの言葉がナレーションとして挿入されていて、自閉症者固有の視覚情報や聴覚情報、言語感覚、こだわりや反復による安心感が実際にどのようなものなのかが良くわかる。当時者の視点や聴覚を意識した映像も美しい。東田の本に出会ったことで自閉症の息子の世界を理解できた作家D・ミッチェルはじめとする親たちの不安にもカメラを向けており、切なくなる場面も。が、この現実があるからこそ映画やドラマではかっこよく描かれがちな自閉症者の真の姿を理解することができるのだ。多くの人に見てほしい。