AGANAI 地下鉄サリン事件と私 (2020):映画短評
AGANAI 地下鉄サリン事件と私 (2020)過去から逃れ真実から目を背ける加害者心理を炙りだす
地下鉄サリン事件によって人生を狂わされた被害当事者であるさかはらあつし監督と、オウム真理教の後継教団アレフの広報部長・荒木浩。共に関西出身で京都大学卒業生である2人が、一緒に故郷を訪ねて過去を振り返っていくロードムービー的ドキュメンタリー。そこから浮かび上がるのは、過去から逃れようとするあまり真実から目を逸らしてしまう加害者側の心理だ。自分は直接関わっていないから、幹部の証言だけで尊師が関与した証拠はないから、残された私たちに真実は分からない。そんな理由で今もなお信仰を捨てられずにいる荒木氏の弁明には、過去の戦争犯罪に対する日本人の潜在意識と相通ずるものがあるようにも思える。
この短評にはネタバレを含んでいます