ローグ (2020):映画短評
ローグ (2020)ライター4人の平均評価: 3
B級感満載の戦闘アクション×アニマル・パニック!
テロ組織に誘拐された白人知事の娘を救出するため、精鋭ばかりの傭兵チームがアフリカ某国へ乗り込んだところ、テロリストだけでなく血に飢えた凶暴なライオンとも戦わねばならなくなる。傭兵チームの女性リーダー役ミーガン・フォックスが全く強そうに見えないのが大きなネックではあるものの、その分は『ストライクバック』シリーズの筋肉タフガイ俳優フィリップ・ウィンチェスターがネアカな豪快マッチョぶりを発揮して補ってくれる。余計な前振りを最小限にとどめたノリとテンポの良さも悪くない。まあ、見るからにCGの人喰いライオンはなんだかな~だけれど、それを含めてB級アクションならではのチープなスリルを楽しむ作品だ。
あつまれ ライオンの森
『デス・フロント』『処刑島』のM・J・バセット監督作らしく、意外なキャラが意外な場所に迷い込み、酷い目に遭うホラー仕立てのサスペンス。冒頭のキャラ解説すっ飛ばしな救出劇のように突っ走れば、『G.I.ジェーン』×『ゴースト&ダークネス』ともいえる怪作になったかもしれない。だが、人喰いワニやゾウの登場で盛り上げながら、中盤以降の展開が散漫となり、肝心な人喰いライオンもCGバレバレな動きだったり……。しかも、最後に出てくる熱いメッセージが、まさか監督によるものという珍妙な仕上がりに。そんななか、バックストリート・ボーイズの「Everybody」が景気づけに相応しい曲だということを認識させてくれる。
フォックスvsライオン、勝つのはどっち?
美人女優M・フォックスが傭兵役という時点で80年代のビデオスルーB級映画の香りが漂い、食指が動いた。女隊長サムが屈強な男たちを率いて危険なミッションに挑み、次々と想定外の出来事に見舞われる展開は悪くない。意味はちと違うけど、前門の虎と後門の狼って感じだ。華奢なフォックスが巨大な銃を軽々と扱っていて、かなり特訓した模様。イスラム過激派による女子学生誘拐へのアンチや逆境に負けない女という今どきのテーマもしっかり組み込まれているが、獣医志望だったM・J・バセット監督が本当に伝えたかったのはライオンの缶詰狩りへの問題的提供だろう。ライオン狩りをしたい人間は素手で戦えと思う身としては、雌ライオンを応援!
"ローグ"と呼ばれる2者を重ねて描く
タイトルの「ROGUE」という語には"悪党"という意味と、"群を離れた孤独な獣"という意味がある。映画にはこの語で呼ばれるのに相応しい存在が2者登場するが、その性別はどちらもオスではない。一人は傭兵集団を率いる凄腕の女性兵士。一頭は人間を襲うメスのライオン。この2者のイメージが重ねて描かれて、ライオンを語る人物が「真に優れたハンターはメスだ」と言う時、想起されるのはライオンだけではない。そして、彼らがなぜそのような存在になったのかは、物語の中で明かされていく。そんな女性兵士をミーガン・フォックスが演じ、銃撃をはじめとする優れた戦闘能力だけではなく、精神の強靭さとしなやかさを体現してみせる。