偶然と想像 (2021):映画短評
偶然と想像 (2021)ライター2人の平均評価: 4.5
ありがちなオムニバスとは段違いの面白さ
一見、ご都合主義にも感じてしまう“偶然”を、とにかくカットを割らず、独特な会話劇で魅せることによって、いつの間にか納得させてしまう、恐るべき濱口竜介監督祭り。作風や撮り方に関してはエリック・ロメール監督~ホン・サンス監督の流れを踏襲しているが、試写会場が爆笑に包まれただけに、新規向けともいえる優しい作り。それにしても、いろんな意味でホラーな「第1話」、エロが匂い立つ「第2話」に続く、仙台駅のエスカレーターを使った演出が印象的な「第3話」。「PASSION」でも共演した占部房子と河井青葉が醸し出す演劇的な空気感とラストの多幸感がたまらない。今後製作される予定の残り4話が楽しみだ。
やや突飛な展開に「自分にも起きたら?」と引き込む天才の作劇
タイトルどおり「偶然」がキーワードなので、描かれる3つの物語は非日常の突発的。同じような経験をする人はかなり少数のはず。なのに、俳優の瞬間的反応、セリフのタイミング、それを捉えるカメラ位置など、あらゆる要素が計算づくで重ねられ、観ている側も「自分ごと」と錯覚する。その臨場感覚がスーパー級。
すれ違った相手に見覚えを直感する3本目は、作劇の巧妙さもさることながら、過去のどの映画とも違う幸福感がもたらされ、奇跡に接したかのよう。
実験的手法も効果的だった『ドライブ・マイ・カー』に比べ、日本人だからこそ理解できるネタがあったり、肩肘張らずに意外なツボを突いてくるので、さらに観客の間口を広げるのでは?