サムジンカンパニー1995 (2020):映画短評
サムジンカンパニー1995 (2020)ライター3人の平均評価: 4
組織も社会もそれを構成する個人の幸福なしでは成り立たない
韓国経済のグローバル化が本格化し始めた’95年、大志を抱いて大企業へ就職したものの、歴然と横たわる学歴格差や横行するセクハラに道を阻まれ、持てる能力を発揮できずにいる高卒女子社員たち。そんな彼女らが環境汚染問題に対する自社の隠蔽工作に気付いてしまい、危険を顧みず不正を暴くために奔走していく。我々は何のために仕事をするのか、長いものに巻かれて不正を見過ごしてもいいのか、そもそも組織も社会もそれを構成する個人の幸福なしでは成り立たないのではないのか。その問いかけは現在の日本人にも深く刺さるはずだ。実話をベースにしたストーリーもスリルと笑いと感動がてんこ盛りで、最後の最後まで本当に目が離せない。
痛快! 韓国OL通り
1991年に実際に起きたドゥサン電子の水質汚染事件をモデルにしている本作。15年前、大量廃棄された毒物から生まれた怪物『グエムル』に立ち向かったコ・アソンが演じるというのが、なかなか興味深い。男性中心の社会への憤りを込めて描かれるなど、「ショムニ」な雰囲気を醸しながら、『サニー 永遠の仲間たち』系譜のガールズムービーとしても楽しめるが、クライマックスにかけての流れなど、時代的にいちばん近いのが『OL忠臣蔵』だったりする。8ビット風ゲームを意識したエンドロールなど、いろいろとツボを突いてくるものの、潜入シーンなど、ここぞというときにイマイチ盛り上がらない演出は、ちょいと残念だ。
汚染問題を痛快エンタメに仕上げる韓流パワーに脱帽
学歴が人生を左右する90年代の韓国社会で、負け犬感がある高卒OLに焦点を当てた痛快作。国際化に向けて突っ走る時代なので英語力を武器にと意気込むヒロインたちだけど、現実とのギャップがおかしくも切ない。だからこそ男尊女卑的な待遇やセクハラに耐えながら、「おかしい」と思ったことを正そうと頑張るヒロインたちに勇気をもらえる。汚染水垂れ流し問題に絡む黒幕探しも二転三転するプロットで楽しませるし、ネットワーク力を発揮する高卒OLたちが本当に痛快。90年代に起きた汚染水問題をエンタメ作に仕上げる韓流パワーに脱帽だ。キャラの個性を伝える衣装や時代感あふれる美術など非常に丁寧な作り方。