草の響き (2021):映画短評
草の響き (2021)長距離ランナーの孤独
手掛ける監督や脚本家は違えど、『海炭市叙景』以来、これまで一切ハズレがなかった佐藤泰志原作の映画化だが、ベテラン斎藤久志監督と加瀬仁美が組んだ本作も、期待を超えてくる仕上がり。自律神経失調症と判断された男が医師の勧めで、ひたすら走る姿は、まさに『長距離ランナーの孤独』だ。しかも、そんな主人公を演じる東出昌大は、『BLUE/ブルー』のラストから地続きのようなヘヴィな状況下で、もがき苦しむ。そんななか、原作からの大きな脚色である妻の存在がひと筋の光として放っており、彼女を演じる奈緒がベストアクトを魅せる。いくつかの解釈ができるラストや若者たちとの絡みなど、印象的なカットも多い。
この短評にはネタバレを含んでいます