サイコ・ゴアマン (2020):映画短評
サイコ・ゴアマン (2020)ライター4人の平均評価: 3.3
懐かしのエンパイアやトロマを彷彿とさせるB級SFホラー
‘70~’80年代テイストのB級ジャンル映画を作るカナダの映像集団「アストロン6」のメンバー、スティーブン・コスタンスキ監督の単独作。ヤンチャで悪戯好きな小学生の兄妹(特に妹ミミの生意気なクソガキっぷりが傑作!)が裏庭で発見したのは超残酷な極悪エイリアンだった…!という『E.T.』みたいなプロットのもと、エイリアンの弱点である不思議な石を手に入れた兄妹が、「サイコ・ゴアマン」と名付けたエイリアンにあれこれ指図して調子に乗りまくる(笑)。シニカルでナンセンスなユーモアと特殊メイクを駆使したゴア描写が満載。エンパイア・ピクチャーズとかトロマとかの作品を彷彿とさせるノリが楽しい。
“ニチアサ”臭がスゴい
同じカナダの映像集団「RKSS」(『ターボキッド』『サマー・オブ・84』)の好敵手といえる、80年代愛が強すぎる「アストロン6」の新作。クリーチャーから放たれるゴム素材の匂いに、謎のゲーム“クレイジーボール”などのオフビートな笑い、さらに曽我町子リスペクトにしか見えないウイッチマスター(声:黒沢あすか!)など、“ニチアサ”臭がスゴい。そして、怖いモノ知らずの少女・ミミとサイコ・ゴアマンと名付けられた残虐宇宙人のイジりイジられの関係性は、まるでアラレちゃんとニコチャン大王のようだ。そんな地球滅亡の危機が裏庭で展開されるミニマムな世界観と容赦ないゴア描写の融合に、終始頬が緩みっ放し。
監督のクリーチャーへの愛が溢れまくり
子供の頃からアニメの悪役が大好きだったというカナダ人監督スティーヴン・コスタンスキが「80年代~90年代の低予算ジャンル映画への愛から生まれた」と語る通りの愛が溢れまくり。「子供が主人公のモンスター映画」の定番設定の裏返しで、怪物と出会う幼い少女は凶暴、その兄は気弱、両親には問題があり、サイコ・ゴアマンが一番真っ当ないいヤツ。監督の愛は多数の宇宙人やモンスターたちにたっぷり注がれていて、CGIではなく被り物の彼らのデザインは、みなマヌケで愛らしく、往年のトロマ映画の味わい。デザインがちゃんと凝っていて、一体ずつもっとじっくり見たいと思わせる。グロい場面がわりとあり「ゴアマン」の命名にも納得。
小学生女子が最強なファミリー・ホラー
ナンセンスな設定やキャラ造形、手作り感あふれる特撮にロジャー・コーマン的なチープさが漂う、B級映画好きにはたまらない快作。銀河系最恐の怪物を操れる宝石を手に入れた小学生ミミが彼をサイコゴアマン(通称PG)と命名し、家来として連れ回すことで起こるハプニングに大笑い。N=J・ハナが演じるミミがかなりの切れキャラで、邪悪なはずのPGも手玉に取られっ放し。小学生あるあるな会話やカルチャーギャップの使い方も上手い。しかもブラックな笑いとグロい殺戮シーンだけでなく、ファミリー・ドラマ的な展開も組み込まれていて、意外に奥が深い。一見いい話にも思えるのだが……、エンドクレジットまでシュールなり。