スパイラル:ソウ オールリセット:映画短評
スパイラル:ソウ オールリセットライター4人の平均評価: 3.3
『セブン』風の犯罪スリラーへ舵を切ったシリーズ最新作
元相棒の汚職を告発したために警察署内で孤立する刑事が、ジグソウの模倣犯によるものと思しき連続猟奇殺人事件の謎を追っていくと、やがて腐敗した警察組織の実態が浮かび上がっていく。『セブン』風のハードボイルドな犯罪スリラーへと衣替えした『ソウ』シリーズ9作目。それなりに摸索を重ねた末の新規路線だとは思うのだが、しかし残念ながらあまり成功しているとは言えない。予定調和な展開は途中で結末が容易く読めてしまうし、社会派を匂わせる設定も不完全燃焼で終わってしまう。とりあえず、シリーズ最大の売りであるゴア描写は健在。平均的なB級サスペンスという印象だ。
シリーズ縁の監督の復帰を喜べるかが評価の分かれ目
『ソウ』シリーズ2~4作目を手がけたバウズマンが監督に復帰。さて……と思いつつ観たが納得がいった。
警察内の汚職――『ソウ2』での汚職刑事と息子の受難は、小さなワンエピソードだったが、本作でバウズマンは主題をそこに置く。“これまでと違うアプローチをとりたかった”と彼は語るが、構成や映像はもちろん、ドラマ重視の点に新味が出た。
が、それを受け止められるかどうかはファンのシリーズ観によって違ってくる。デスゲームの複雑さを楽しみたい向きには浅く見えるかもしれない。クリス&サミュエルのシリーズ最大のスター共演でヨシとする向きもあるだろう。あなたのシリーズ愛が試される!?
サミュエル降臨の「新シリーズ」
またも仕切り直しの「新シリーズ」だが、『48時間』『セブン』あたりを意識したバディコップ・ムービーとして展開していく新機軸にして、そこまでウザくないクリス・ロックとサミュエル・L・ジャクソンが親子(というムチャ設定)で巻き込まれるという、スター映画としても楽しめる。過去にジグソウの事件が起こっていたことが前提になっており、警察内部の汚職をテーマに、オマージュ的な要素もいくつかみられる。B級サスペンス・スリラーとしてはまずまずの出来だが、売りのひとつでもあったゲーム要素があまりに薄いというか、選択の余地もない内容から『ソウ』としては、ちょっとモノ足りない。
引き継いだもの/引き継がなかったものが興味深い
製作&主演のクリス・ロックはこのシリーズの大ファンで、続編ではなく、ここから新しい物語が始まる作品として構想したとのこと。とはいえ、映画のタイトルであり、ポスターのメインビジュアルでもある渦巻は、このシリーズのビリー人形の頬に描かれていた図形。それが象徴するように、シリーズからそのまま継承している部分があり、変形させて登場させた部分があり、逆にまったく引き継いでいない部分もある。もちろん、これまでのシリーズにはない、新たに追加された要素もある。映画を見ているとそれが浮かび上がってきて、自分にとって「ソウ」の真髄とは何なのか、「ソウ」で見たいものは何なのかが明らかになってくるのも興味深い。