スイング・ステート (2020):映画短評
スイング・ステート (2020)ライター4人の平均評価: 3.3
選挙を面白がる方法が、ここに!?
地方選挙が与野党の代理戦争と化す光景は日本でもしばし見受けられるが、田舎の町長選挙でも大騒ぎしてしまうのがアメリカ。本作はもちろんフィクションだが、それでも現実感がありエンタメとして成立する。
対立する選挙参謀同士のえげつない戦いぶりは笑えるし、コメディ俳優と演技派の境目がどんどんあいまいになってきたS・カレルら俳優陣の妙演も味。何より、いびつな選挙システムを逆手に取る弱者の逆襲は意外性満点で、痛快な後味をあたえる。
どんなシステムも、多くの人や金が絡むと機能不全を起こす。そんな世相への風刺もピリッと効いた社会派コメディ。衆院選前に見ておくと妄想も膨らみ、選挙戦をより楽しめる!?
アメリカの振り見て、我が振り直そう!
何でもありと思わせるアメリカの選挙事情を軸に、ワシントンのエリート層と中西部で生きる庶民の生活感がかけ離れている現実を浮き彫りにする風刺的コメディだ。4年後の政権奪還に向けてど田舎の町長選挙に介入する民主党の選挙参謀も平気で嘘をつくライバルもかなりカリカチュアされているが、実際にいそうな気配濃厚。特にR・バーンが演じる共和党の選挙参謀はケリーアン・コンウェイがモデルのはず。スピンの達人だし! 国民不在の政治がまかり通る国への不安は、政治ネタを得意とするコメディアン、ジョン・スチュワート監督らしいメッセージだ。民主主義の危機に直面するアメリカを見て、日本人も笑ってる場合じゃないと思うはず。
こんな町長選いやだ
wifiもない、プライベートもない、おまけに予算もないと、吉幾三が出てきそうな田舎町の選挙戦を描くという着眼点は、いかにも「プランB」制作らしく、なかなか面白い。とはいえ、キーパーソンとなるクリス・クーパー演じる町長選に出馬する退役軍人キャラが薄いこともあり、スティーヴ・カレル演じる選挙参謀の苦悩が、なかなかブラックな笑いに繋がらない。テレビ出演やCMなどのパロディに関しても、明らかに現実の選挙戦の方が笑える状況で、どっちつかずな仕上がりになった感アリ。マッケンジー・デイヴィスの使い方も首を傾げてしまうなか、いちばん美味しいのは、ビッチなライバル参謀を演じるローズ・バーンだったりする。
痛烈なブラックコメディを期待したが
政治ネタを大得意とするジョン・スチュワートが監督、脚本を務めるということで痛烈なブラックコメディを期待していたが、違った。最後には彼が伝えたかったことがわかり、なかなか良い点を突いていると思うものの、もっと面白く、大胆にやれたはずと感じてしまうのだ。それでもまずまず楽しめるのは、スティーブ・カレルのおかげ。ここ7年ほど、シリアスでダークな役を中心に選んできているカレルのコミカルでチャーミングな姿を久々に見られるのはそれだけで楽しい。しかし、ここでもまた、彼なのだからもっとファニーな映画になったはずと物足りなさが残る。