土を喰らう十二ヵ月 (2022):映画短評
土を喰らう十二ヵ月 (2022)昔ながらの素朴な料理から見えてくる日本の原風景
長野県の古い山荘にひとりで暮らす初老の作家が、自宅の畑や周囲の山で採れた野菜を自ら調理し、時おり訪れる恋人の女性編集者や知人らと一緒に味わう姿を、季節ごとに表情を変える信州の美しい自然を背景に淡々と綴っていく。タイトルの「土を食らう」とは「旬を食べる」ということ。主人公が作る昔ながらの素朴で質素な料理の数々には、旬の素材の味を活かして無駄にしないための先人たちの知恵が詰まっている。ストーリー自体はあってないようなものだが、それゆえ日本の原風景とも呼ぶべき生活が際立つ。四季折々の恵みに感謝し、日々を慎ましやかに暮らす。なんとも心癒される光景だが、しかし現代の文明人にはなかなか難しかろう。
この短評にはネタバレを含んでいます