ギャング・オブ・アメリカ (2021):映画短評
ギャング・オブ・アメリカ (2021)ライター2人の平均評価: 3
ハーヴェイ・カイテルの芝居に圧倒されるギャング映画
親友バグジー・シーゲルやラッキー・ルチアーノらとアメリカの裏社会を仕切り、カジノ事業で巨万の富を築いた大物マフィア、マイヤー・ランスキー。マイアミで静かに隠居生活を送る晩年のランスキーが、伝記を書かせるため雇った作家に自らの激動の半生を語る。その過程でマフィアと米国政府のただならぬ関係が浮き彫りにされていく…という筋書きに目新しさはない。かなりの低予算映画であることも一目瞭然だが、しかし懐の深さと眼光鋭さを兼ね備えた老紳士ランスキーを演じるハーヴェイ・カイテルの存在感は圧倒的。ただそこに佇んでいるだけで、生き馬の目を抜く暗黒街で勝ち残ってきた男の人間的な魅力すら感じさせるのは凄い。
実話ギャング映画でありつつ、アメリカの変化をも描く
2つの物語が同時に進む。一つは、今は老いたマフィアの大物マイヤー・ランスキーが、彼の伝記を書くライターに語る、彼がこれまでやってきたことの物語。もう一つは、そのライターに降りかかるさまざまな出来事。この形式で描かれる物語は、実在のマフィアの伝記ものでありつつ、いわゆる実話ギャング映画の枠に止まらず、より俯瞰的な視点から見たアメリカ犯罪社会の変化を描く物語にもなる。そして、アメリカにとってギャングとは何だったのか、そして今は何なのかを考察する物語にもなっていく。
若き日の強烈な体験を、ダイナーで静かに語る老いたランスキー役のハーヴェイ・カイテルが、そこにいるだけでさすがの存在感。