中村屋酒店の兄弟 (2019):映画短評
中村屋酒店の兄弟 (2019)静かで味わい深い2部構成
暗闇の中で始まる前日譚となる10分ほどのラジオドラマに続き、本編45分が始まる、なかなか興味深い2部構成。“ある秘密”を抱えた藤原季節による引き算芝居はもちろんだが、『ミセス・ノイズィ』でのヒロインの夫役が印象深かった長尾卓磨が魅せる微妙な感情の動きも見どころであり、兄弟の関係性を象徴した釣りや食卓を囲むシーンが後々ジワってくる。二十代半ばの監督が撮ったとは思えないほど、しっかり人間が描かれており、静かで味わい深い連作に仕上がっている。また、ロケ地となった中村屋酒店の閉店に密着したドキュメンタリー(YouTube配信のみ)もあり、続けて観ると、さらなる人間ドラマが見えてくる。
この短評にはネタバレを含んでいます