狼たちの墓標 (2021):映画短評
狼たちの墓標 (2021)新旧ヤクザの激突に現代韓国の世相が浮かび上がる
右肩上がりに経済成長を続ける韓国のリゾート開発計画を巡って、義理と人情を重んじる昔気質の地元ヤクザと、目的のためなら手段を選ばない外部の新興勢力が、文字通り血で血を洗う凄まじい権力抗争を繰り広げる。日本の任侠映画にもありがちなストーリーに新鮮味はないものの、弱肉強食の現代社会で下剋上を狙う成り上がりヤクザ、チャン・ヒョクの冷酷な狂犬ぶりが圧巻。時代の変化に困惑しながらも受け入れざるを得ない中年ヤクザ、ユ・オソンとの対比も面白く、生存競争が激しさを増す現代韓国の世相が背景に浮かび上がる。ハードなバイオレンス描写もさることながら、脇役のひとりひとりまで丹念に描き込んだ脚本が非常に魅力的。
この短評にはネタバレを含んでいます