ナワリヌイ (2022):映画短評
ナワリヌイ (2022)ライター2人の平均評価: 4.5
プーチン政権下のロシア社会の実態を知る上でも必見!
プーチン大統領にとって最大の天敵とされ、飲み物に毒物ノビチョクを混入され暗殺されかけた、ロシアの反体制派弁護士アレクセイ・ナワリヌイに密着取材したCNN制作ドキュメンタリー。いやあ、これはもうそんじょそこらのスパイ映画など比較にならない面白さ。中でも、毒殺を仕組んだFSB暗殺チームのメンバーを特定して個人情報を突き止め、彼らの尻尾を掴んで真相を暴いていく過程は、ロシア当局のあまりに杜撰な情報管理体制を含めてビックリ仰天である。プーチン政権下におけるロシア社会の実態を垣間見るという意味でも興味深い。TikTokでアメリカの歌を歌っただけで、テレビのトーク番組で国賊扱いされるとは!
勇気、ユーモア、カリスマに満ちたヒーロー
今年のサンダンスで審査員賞と観客賞をダブル受賞。映画の冒頭でナワリヌイはロアー監督に「これはスリラーにしてよ。もし僕が殺されたら、つまらない思い出の映画にして」と言うが、その通り優れた政治スリラーになった。プーチンがその名前を口にすることも避けるほど嫌うナワリヌイは、自分のチームと共に、自分を殺そうとしたのが誰だったのかを突き止めてみせる。リアルタイムで明かされていくその過程は緊張感たっぷり。プーチン政権のあまりのひどさに絶望を感じるも、勇気とユーモアのセンスがあるナワリヌイが希望をくれる。しかし、この結末を本当の結末にしたくはない。彼が釈放され、大統領になる続編をぜひ見たいものだ。