ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック! (2023):映画短評
ミュータント・タートルズ:ミュータント・パニック! (2023)ライター4人の平均評価: 4.3
ジャッキー・チェンへのリスペクトも激アツ!
「スプラトゥーン」なグラフィックの面白さなど、明らかに『スパイダーマン:スパイダーバース』フォロワーな一本ではあるが、邦題では取れてしまった“ティーンエイジ”に焦点を当てたセス・ローゲンらしさが全開! タートルズだけでなく、エイプリルの青春の苦悩や葛藤も描かれ、おなじみ負け犬たちの逆転劇に心熱くなる。本編も登場する『フェリスはある朝突然に』のオマージュに加え、スプリンターの声を吹替えたジャッキー・チェンに対するリスペクトも、『ベスト・キッド』以上に激アツ。「進撃の巨人」が普通にネタになっているのも興味深く、実写・アニメ含め、『タートルズ』映画化作品において1、2を争う仕上がり!
ティーンの心を忘れないセス・ローゲンらしい映画
今作ではティーンの男の子たちがカメの声を務めるのがまず新しい。昔からこのシリーズにはまってきたセス・ローゲンは、いつもそこが気になっていたとか。「フリークス学園」でブレイクし、「スーパーバッド 童貞ウォーズ」で脚本家デビューしたローゲンは永遠にティーンの心を忘れない人で、これも実に彼らしいユーモアのある作品になった。マイケル・ベイの映画ではセクシー女優ミーガン・フォックスが演じたエイプリルも、「一流シェフのファミリーレストラン」で大注目のアヨ・エデビリが声を務める今作ではもっと共感しやすくなっている。子供の落書きのような雰囲気もあるアニメーションスタイルも斬新。
今度のタートルズたちはカッコイイ!
予告編で、ルー・リードの「ワイルドサイドを歩け」のベースラインが鳴ったと思ったら、それをサンプリングしたア・トライブ・コールド・クエストの「Can I Kick It?」になり、そうだよ、ここはNYだし、と頷きつつ、本作がストリートカルチャーを意識したカッコイイ映画になることを予感したが、それは大当たり。音楽担当もデヴィッド・フィンチャー監督作の常連、トレント・レズナー&アッティカス・ロスだ。
映像は『スパイダーマン:スパイダーバース』やTV『アーケイン』系の自由さで、高校生の落書きテイスト。同原作の映画化史上初の、どこにでもいるティーンの気持ちと声を持つカメたちが、大暴れしてくれる。
音楽・絵柄ともにクール! シン・ゴジラに似たカタルシスも
ストリートアート風のアニメスタイル、そこにアッティカス・ロスとトレント・レズナーの音楽が重なり、タートルズ映画でここまで「カッコいい」と唸る瞬間が多発するのは初めて。観終わっても、幸せ気分の脳内にエンドロールのメロディがリフレインする。
多数出てくるミュータントのデザインも、マニア心を刺激しつつ、本作独自の画風にマッチ。ふとした瞬間に可愛く見えたりして、視覚的に飽きさせない。
『フェリスはある朝突然に』の使い方がちょっと切なく胸を締め付けたりと、数々の引用ネタ、その効果も絶妙。中でも日本のモンスター映画や漫画へのオマージュは熱く、その延長でアクション+感動の最高バランスをなしとげた名シーンも。