サイレント・ナイト (2021):映画短評
サイレント・ナイト (2021)ライター4人の平均評価: 3.3
環境問題から目をそらし続けた人類の最後の日
とあるクリスマスイヴの当日、イギリスの田舎にある屋敷に家族連れの友人たちが集まる。微妙に張り詰める緊張感。というのも、気候変動の影響で発生した猛毒ガスが人類を滅亡の危機へ追いやり、明日にもイギリスへ到達する予定だったからだ。いわば、「人類最後の日」を描いた終末ドラマ。環境問題やエネルギー問題に見て見ぬふりを決め込んだ人々が、最後の日になってもクリスマスパーティで現実逃避に走るという皮肉。「世の中というのは不条理なんだ」と嘯く大人を、「それって単に解決を諦めただけだよね!?」と子供が一刀両断する辺りは鋭いが、しかし全体的には脚本のまとまりが悪く、社会風刺的なアイディアを活かしきれていない。
聖夜のプレゼントが“死”だなんて、受け入れられない!
クリスマスイブの夜、世界は終焉を迎える……そのとき、あなたならどうする? そんなことを考えさせる風刺スリラー。
家族ぐるみのつきあいである親友同士の4世帯が行なった最後のパーティ。そのさなかに、“死ぬなら美しく死にたい”と“死ぬ前だから好きなことを”がせめぎ合う。人間の滑稽さがにじみ出るブラックユーモアが妙味。
そんな大人たちをヨソに、子どもは子どもなりに考える。死にたくない。生きたい。大人に従いたくない――『ジョジョ・ラビット』の名子役R・G・デイヴィスが、親に向かって4文字言葉を吐きまくる、抵抗の生命力を体現。そこには確かに考えさせるものがある。
ザワつく!クリスマス
奇しくも『ザ・メニュー』と同じ、12人の男女が一堂に会するところから始まるブラックコメディ。『ザ・ロード』もネタにしてしまう、決して穏やかじゃない人間たちの心の揺らぎを描いているあたりが、じつにイギリス映画っぽく、政府からの対策に関しては、コロナ禍でのワクチン接種とシンクロするリアルさも。キーラ・ナイトレイ繋がりで、『エンド・オブ・ザ・ワールド』との共通項も多い一作だが、こちらは90分の舞台劇を観ているような趣。もはや、子役の域を超えているローマン・グリフィン・デイヴィスの芝居のほか、『マリグナント 狂暴な悪夢』のアナベル・ウォーリスの芸達者な一面も楽しめる。
人類最後のクリスマスがやってきたら
いろんなところでキナ臭いことになっていて、人類最後の日をただの空想上の出来事と思っていいのか危ぶまれる今日この頃、あえて映画の形になっている"人類最後のクリスマス"を見て、そこから距離を置いた気分になるのも一興。家族が集まると生じる小さな軋轢は、滅亡直前でもいつもと変わらず、そんなものかもしれないと思ったり。大人には大人の考え方があるが、子供には子供の思考回路があることに気づかされたり。
『ジョジョ・ラビット』の主人公の少年を演じたローマン・グリフィン・デイヴィスと、その双生児の弟ハーディとギルビーが出演し、彼らの母親カミーユ・グリフィンが監督。その意味でもファミリー映画と言えそう。