そして僕は途方に暮れる:映画短評
そして僕は途方に暮れるライター3人の平均評価: 3
誰もが多少なりとも身につまされる(?)ダメ男の逃亡劇
つい他人の優しさに甘えてグウタラするくせに、それを面と向かって指摘されると逃げ出すフリーターのダメ男が、そのせいで友達や家族のもとを転々と居候することになる。要するに、誰かと真剣に人間関係を築くことのできない若者の逃亡劇だ。そんな主人公のクズっぷりに呆れつつも、しかしその「人と向き合うことを避けてしまう」気持ちも分からないではない。なにしろ、それは自分自身の「ダメな部分」と向き合うことでもあるから。むしろ、誰もが多少なりとも身に覚えがあるはず…という微妙な居心地の悪さが本作のキモですな。丸く収まりそうで収まらないラストまで、果たして自分にはこいつを批判する資格があるのか?を問いかけられる。
キスマイ藤ヶ谷が芸達者な面々に囲まれ、クズ男を好演
気まずくなると、すぐにその場を立ち去るクズすぎる主人公・裕一。そんなイマドキっぽさも感じさせる難役を、藤ヶ谷太輔は生き生きと演じ切る。前田敦子と中尾明慶という「舞台版」と同じキャスト&芸達者な面々に囲まれたことも、彼にとって大きな強みだったといえるだろう。ラスボス的な父親を演じる豊川悦司の存在感は相変わらず抜群で、藤ヶ谷との掛け合いは見どころのひとつ。だが、「舞台版」同様、彼の行動に共感できるものもあれば、次に繋げるためか、強引に感じられるものもあり、そこにノレるかどうかが評価の分かれどころ。エンドロールに流れる大澤誉志幸の名曲も、なぜ原曲でないのか不満が残る。
逃避と強がりと
現実逃避&逃避行という名のロードムービーでした。とにかくまずくなると逃げて逃げて逃げ続ける主人公に反感とイラつきを感じつつ、どこか共感してしまう部分がある映画。人生は結局、現実逃避の連続と、それに対しての強がりという名の言い訳の連続なのかなと…。後ろ向きに行き過ぎて気が付いたら前を向いている感じが良いですね。”面白くなってきやがった”という言葉はどこかで使いたくなる言葉です。人生”途方に暮れてからが勝負”なのかもしれませんね。大澤誉志幸の楽曲が最後に爽やかでちょっとだけ希望をくれます。