劇場版 センキョナンデス (2023):映画短評
劇場版 センキョナンデス (2023)ライター2人の平均評価: 3.5
酔狂さに自覚的な野次馬にして、「政/祭りごと」を好む暴れ馬
“野次馬コンビ”を自称する、ラッパーと時事芸人による衆参選挙戦の漫遊記。ドキュメンタリーだが感触としてはさながら、傑作映画『コミック雑誌なんかいらない!』(86/監:滝田洋二郎)のよう。すなわち突撃レポーター、内田裕也サン演ずるあのキナメリのごとく体を張り、内容的にも同じくヴィヴィッドに時代を切り取りつつ、コメディからホラーまで多ジャンルを横断してゆくのだ。
しかも二人の肝の据わり方は、明治大正時代、ジャーナリストとして活躍した反骨のパロディスト・宮武外骨や、その影響下で生まれた、前衛美術家・赤瀬川原平の漫画キャラ=馬オジサンと泰平小僧にも匹敵する。つまりパンクで、元気の出る映画ナンデス!
選挙の裏に軽やかに食い込みつつ、元首相銃撃事件で不測の方向へ
「なぜ君」「香川1区」から地続きの流れで、日本の選挙システムに食い込んでいくラッパーと時事芸人のコンビは、時に相手の心を開き、時に相手を油断させ…と、その巧みな会話術に惚れぼれするが、いかに裏で計算しているかも伝わり、プロの仕事を実感。基本は面白おかしくのムードを守りながら、重要なポイントではズバッと切り込む、そのメリハリでドキュメンタリーとして飽きさせる余裕なし。
制作中に安倍元首相の銃撃事件がとびこんできて、その衝撃をリアルタイムで作品に入れ込んでいくので、作り手側の混乱もビビッドに記録。ただそこのインパクトが強い分、一本の映画として何を伝えたかったか、ややメッセージ性がボヤけた印象も。