CLOSE/クロース (2022):映画短評
CLOSE/クロース (2022)ライター4人の平均評価: 4.8
ローティーンの、そして現代の、リアル
少年ふたりの友情の揺れを描いている点で最初は『怪物』を連想したが、こちらの方が年齢は1~2歳ほど上か。この年頃の1歳差は大きく、その大きさゆえに友情の破綻も悲劇性が強い。
映画が重きを置くのは主人公レオの表情で、感情の機微が実によくとらえられている。重要な誰かに向けられているときのカメラ目線は鋭く、観客にはその表情が強烈に焼き付くだろう。
思春期の息苦しさが、そのまま現代社会の生きづらさにリンクする点も絶妙。ドン監督は自身の体験を基にしていると語るが、文科系少年がヘテロアピールのために無理して体育会系っぽく振舞わねばならないローティーン環境がリアルで、見ていて胸が痛い。ともかく必見。
13歳の少年の世界が、姿を変える
それまで自分が見ているものが世界だと思っていた13歳の少年が、"他人が見ている世界"の存在をリアルに体感する。彼の世界の変貌が生々しく描かれて胸を打つ。
緑に囲まれた田舎の、主人公とその親友と彼らを愛する家族だけが生きている、植物と光が溢れる世界の美しさ、完璧さ。2人が並んで野原を走る時に彼らに降り注ぐ光の透明さ。しかし、主人公が中学校という集団に属し、周囲の人々の目に映る自分を意識した時、世界は色を変え、手触りを変え、別のものになる。そして彼がそれに適応しようとする中で、悲劇が起きてしまう。その出来事は重すぎるが、彼は逃げない。13歳の少年の決然とした眼差しがどこまでも強い。
この年齢だからこその、繊細で切ない物語
純粋無垢な子供からヤングアダルトへと移行する13歳という年齢だからこその物語。とても切なくて、悲しくて、観終わった後もいつまでも心から離れない。レオとレミがお互いの人生でかけがえのない友人同士であること、ふたりの性格の違いが冒頭からしっかり描かれていることが、ストーリーに説得力と、より強い感情を持たせる。ふたりを演じる俳優がこれで映画デビューする新人というのも驚き。これは極端な例だとしても、成長には時に痛みが伴うもの。一見明るく平和であっても、中学校というところは意図せずして残酷になりえる。そして友情は些細なことで壊れてしまったりする。そんなことをいろいろ考えさせる、繊細で美しい傑作。
13歳の感情を慈しむようにすくい、切なさと愛おしさの究極点へ
冷静に振り返れば、あまりに残酷で切実な物語だが、後味は限りなく愛おしく、不思議な温もりに包まれた。これこそ映画の魔法かも。
13歳の主人公にとって大切な何か、純粋な感情をいかに守れるか。そこはかなり危うい。世間に迎合し、心の扉を閉めた方がラクだろう。この年代の複雑な心情を、ルーカス・ドン監督は慈しむように紡いでいく。冒頭からラストまで、美しい花畑、少年たちを照らす光で、未来を指し示すような映像設計にも唸る。そして監督がオーディションで「計算高さに驚いた」という2人の少年の、役への没入度は尋常ではないレベル。
子供たちへのアプローチとして日本映画『怪物』とは様々な方向から比較したくなるはず。