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夜明けのすべて (2023):映画短評

夜明けのすべて (2023)

2024年2月9日公開 119分

夜明けのすべて
(C) 瀬尾まいこ/2024「夜明けのすべて」製作委員会

ライター3人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.3

森 直人

「新しい世界」を我々の日常世界の現場に立ち上げる

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

三宅唱のフィルモグラフィは広義のパーティー映画と言えるだろう。それは理想的な環境を生成していく営為=演出と繋がっており、『夜明けのすべて』は澄明な極点に立つ。提示するのはコントロールできない環境を体内に抱えた者同士が自然にフォローし合える柔らかな「共生」のモデルだ。

政治的な主題の映画ではなく、映画を政治的な実践として撮る――と喝破したのはゴダールだが、本作が同様の志向で目指すのは「非戦」の可能性だろう。ボーイ・ミーツ・ガールから始まる従来の恋愛=戦闘状態を解体していく手つきは金子由里奈の略称『ぬいしゃべ』にも通じる。鋭敏な作家の新しい世界の捉え方に連動して映画の形式も更新されていく。

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

新たなフェーズに入った三宅唱監督作

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

いわゆる“生きづらさ”を描いた一作だが、お互いを理解することにより、同志のような感情が芽生え、認め合うまでを丁寧に描写。朝ドラ「カムカムエヴリバディ」で夫婦役を演じた松村北斗と上白石萌音が微妙な距離感の同僚を演じるあたり、キャスティングの勝利ともいえるが、そこに光石研や渋川清彦らがガッチリ固める。それにしても瀬尾まいこのハートウォーミングな原作とドライな印象が強い三宅唱監督の相性がここまで良かったとは! 『ケイコ 目を澄ませて』に続く、月永雄太による撮影と16mmフィルムが醸し出す空気感は、映画の醍醐味を味わわせてくれ、三宅監督は確実に新たなフェーズに入ったといえる。

この短評にはネタバレを含んでいます
村松 健太郎

ちょうどよい居心地

村松 健太郎 評価: ★★★★★ ★★★★★

今時、大なり小なり”ナニカ”を抱えていない人などいないと思います。本作はそんな人を励ますとか、背中を押すとかいうほど積極的ではなく、だからと言って過剰に悲劇的に描くわけでもなく、ただただ、隣にそっと静かに立っていてくれる”ちょうど良い居心地”の映画となっています。松村北斗と上白石萌音という朝ドラコンビが今回は互いに抱えているものに、特段何かをするわけではないけれど、そっと寄り添い合う、ある種の仲間を好演。三宅唱監督が熱くなるわけでもなく、ウェットにし過ぎるわけでもない絶妙な空気感を醸し出しています。

この短評にはネタバレを含んでいます
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