MEMORY メモリー (2022):映画短評
MEMORY メモリー (2022)ライター4人の平均評価: 3.3
いつも通りに手堅いリーアム・ニーソン印のB級アクション
認知症を患ったことから引退を決意したベテランの殺し屋。子供だけは手にかけないことをモットーとしてきた彼が、最後のつもりで引き受けた仕事のターゲットが少女だったことから、金にものを言わせて子供を食い物にする権力者たちに制裁を下していく。過ちばかり犯してきた主人公が、罪深い人生の終わりに善行を成し遂げようとする…という基本プロットは『ザ・ホエール』とも相通じるかもしれない。どんどん進行する認知症という重大なハンデがスリルと緊張を、主人公を追うはずのFBI捜査官との奇妙な友情や協力関係が胸熱なカタルシスを生む。やはりリーアム・ニーソン主演のB級アクションは手堅い。
"圧倒的に強い男"リーアム・ニーソンの設定にひとヒネリ
『96時間』シリーズ以来、"圧倒的に強い男"が定番になったリーアム・ニーソンによる安定のアクション・サスペンス。ニーソンが演じるのは今回も凄腕の殺し屋だが、アルツハイマー病の兆候があり、銃の組立ては瞬時にこなすが、記憶が曖昧な時もあるという設定がユニーク。さらに、子供時代のある経験から「絶対に子供は殺さない」という信念を持ち、それを貫いて窮地に追い込まれていく。この主人公の人物像が魅力的。
サブキャラも充実。過去に悲劇のある捜査官役はガイ・ピアースで、主人公にはピアースが記憶障害の男を演じた『メメント』を連想させる場面も。モニカ・ベルッチ扮する富豪は家族の問題を抱え、それぞれ見せ場あり。
そこまでオリジナルに寄せなくても!
ベルギー映画『ザ・ヒットマン』のリメイクだが、主人公の殺し屋がアルツハイマー病である設定をあまり生かせないうえ、彼を追いつめ、やがて手を組む捜査官の方が魅力的という点まで、オリジナルと変わらず。しかも、その捜査官に『メメント』のガイ・ピアースを配するあたり、作り手の狙い通りなのだが、人身売買組織を仕切るモニカ・ベルッチは明らかにミスキャスト。頼みの綱であるマーティン・キャンベル監督も、今回は雰囲気ばかりでメリハリがない。期待していた“リーアム・ニーソン版『ザ・フォーリナー/復讐者』”にならなかったのは悔やまれるが、『ブラックライト』に比べればマシなので、ファンなら及第点だろう。
ニーソン、巨悪より手ごわい敵とバトる!
近年は老いを題材にしたサスペンスアクションに主演することが多くなったL・ニーソンらしく、本作の肝となるのはアルツハイマー。記憶を失っていく老殺し屋という設定を、スリルとして機能させる。
知覚が衰えていくのだから、主人公の巨悪との戦いにはタイムリミットがある。そんな彼と敵対しつつ、共通の目的を持つキャラたちがサポート。ガイ・ピアースふんするFBI捜査官やメキシコ人警官らがイイ味を出している。
不法移民や人身売買などの社会的なテーマに、去り行くアウトローの物語を絡める点で、最近のニーソン主演作では『マークスマン』に近い感触。M・キャンベル監督の手堅い演出も光る。