刑事ジョン・ルーサー:フォールン・サン (2023):映画短評
刑事ジョン・ルーサー:フォールン・サン (2023)ライター3人の平均評価: 3.3
洞察力が良すぎる刑事VSどうかしている猟奇殺人犯
イドリス・エルバ主演の人気ドラマ『刑事ジョン・ルーサー』がNETFLIXで帰ってきた! 異常に洞察力が鋭く、独自のモラルを持ち、事件解決のためならどんなことでも躊躇なく行う刑事が難事件に挑む。どうかしている猟奇殺人犯を登場させることに命を懸けているようなシリーズらしく、今回もアンディ・サーキス演じる犯人の悪趣味ぶりと胸糞悪さがすさまじい。ただし、ドラマ版よりアクションのスケールは大きくなったものの、ストーリーには緻密さを欠く。事件の中核にあるはずの、社会的な死かリアルな死を選べと迫られたときの人間の弱さと脆さをもっと描いてほしかった。未見の人は、陰鬱な雰囲気のドラマシリーズもぜひ見てほしい。
誰もがおぞましい犯行のターゲットになるかも…という恐怖
TVシリーズでもサイコ的な犯罪を描いてきたが、この映画版の凶悪犯は、周囲に絶対言えない秘密を抱えた者をターゲットに、周到な手段で死に追いやっていく。その秘密もどうやら誰でも身に覚えのありそうなレベル。身近な恐怖を感じてしまう人多いのでは?
刑務所に入れられ、脱走を試みる主人公ルーサーの運命が劇的だが、事件解決のために、警察が彼を利用する構図が本作の面白さ。その構図でルーサーのアウトロー的な魅力が増大し、観ているこちらの心が波立つことに。
ロンドンのピカデリーサーカスや地下鉄、さらに思わぬ土地へと舞台が広がり、アクションのスペクタクル感、および緊迫感は高いわりに、犯人の“小物感”が物足りないか。
一見さんにも優しい人気シリーズの番外編
イドリス・エルバが自身最大の当たり役を4年ぶりに演じたシリーズ番外編。一応、テレビ版ラストの後日譚となっており、ファンへの目くばせも随所に含まれてはいるものの、これ単体でも成立する内容なので一見さんでも問題なしだ。犯人逮捕のためなら一切の手段を選ばず、それゆえ刑務所送りとなった刑事ルーサーが、ロンドンを恐怖に陥れるサイコキラーを追って脱獄を企てる。ピカデリー・サーカスでの群衆パニックなど、映画版だからこその大規模な見せ場を用意しつつ、テレビ版同様に容赦のないハードな展開が繰り広げられる。PCやスマホのスパイウェアを悪用した犯行手口も、現実に十分あり得るだけにゾッとしますな。