マッド・ハイジ (2022):映画短評
マッド・ハイジ (2022)ライター4人の平均評価: 3.8
ぜひに、とは言わないけど続編観たい(笑)。
製作はスイスプロイテーションフィルムズ社(笑)。そのまんまグラインドハウス風の過激さバカバカしさチープさを模した作品。女囚/女斗美あり、クンフー修行あり、日本刀アクションあり、景気のいい身体毀損あり、とZ級映画の作法にきちんと則っている。「アルプスの少女ハイジ」(高畑勲版も如実に意識)はもちろん、とにかく徹底的に自国の特産物や風景をおちょくりまくっているのに笑うしかない。自社が作り出す麻薬じみたスーパーチーズを人民に食べさせ人間兵器に仕立てようとする社長=大統領役を、ファシズムをとことん笑いのめした『スターシップ・トゥルーパーズ』のC.ヴァン・ディーンに演じさせるというキャスティングもよし。
ジャンルのごった煮感が楽しいネオ=グラインドハウス・ムービー
チーズ王キャスパー・ヴァン・ディーン(!)によって支配され、乳糖不耐症の人々が迫害される独裁国家スイス。恋人の羊飼いペーターを殺された少女ハイジが、機関銃や斧を手に独裁政権を打倒すべく立ち上がる。女囚にブラックスプロイテーション、カンフーにマカロニ・ウエスタンにナチスプロイテーションにナンスプロイテーションなど、ありとあらゆるサブジャンルを寄せ集めたネオ=グラインドハウス・ムービー。スイス名物の三角チョコ・トブラローネを武器にしたり、クララがなぜか日本人の少女だったり、あえて狙ったツッコミどころが満載だ。欧州で高まるナショナリズムや排外主義への批判も忘れていない。バカバカしくも痛快!
こんなハイジを待っていた!?
「アルブスの少女ハイジ」の後日談を70年代グラインドハウス風に作ったら、こうなった! いやはや『マチェーテ』もビックリの快(怪?)作。
ハイジが恋人ペーター(有色人種!)と納屋で×××するという設定だけでもぶっ飛んでいるが、『ナチス女収容所』シリーズのような女囚拷問から『キル・ビルVol.2』的な特訓を経て、独裁者に立ち向かうのだから、面白ければ何でもアリの世界。
エロや人体破壊、クリーチャー、反体制、グルーヴィーな音楽まで徹底的にグラインドハウス。クラウドファンディング製作で、“映画ファンの映画への愛だけで作られた”という冒頭の言葉もある意味、偽りナシだ。イキの良さに★オマケ。
愛され続けるアニメとのギャップに逆に萌える
「アルプスの少女ハイジ」からはキャラを借りただけ…と頭ではわかっているし、ヨーゼフなど“そのまんま”な再現もあるんだけれど、ペーターやクララのあまりの変容には衝撃を通り越して、一周回って楽しんでしまう。そんな不思議なケミストリーは貴重かも。チーズの使われ方は生々しいけど。
血みどろのゴア描写や、見るもおぞましい拷問は、この種の作品では想定内。むしろハイジの「虎の穴」的なトレーニングに妙に時間が割かれ、微笑ましく見守ってしまった。
クララのキャスティングや、セリフ(なぜか「横浜」とか出てくる)に込められた日本へのリスペクト(?)を素直に受け止めながら、怒涛のクライマックスに没入したい。