グランツーリスモ (2023):映画短評
グランツーリスモ (2023)ライター4人の平均評価: 3.5
昭和の青春スポ根モノを彷彿とさせる実録カーアクション
ドライビングゲーム「グランツーリスモ」のトッププレイヤーから、本物のプロレーサーへと転身した若者の実話を映画化したカーアクション。どれだけの脚色が施されているのかは分からないが、内容は王道中の王道とも呼ぶべき若者の成長譚である。指導するのは過去に大きな挫折を抱えた偏屈なクセモノ教官、ライバルは特権階級意識丸出しの意地悪な金持ちのボンボン、子供の将来を案ずるあまり夢を邪魔してしまう頑固な父親との確執などなど、まるで昭和の青春スポ根モノみたいなプロットがどこか懐かしい。VFXに頼らず本物にこだわったというカースタントの臨場感も迫力満点。目新しさは何もないが、気持ち良く劇場を後に出来る作品だ。
ほんとにあった“レース版『スター・ファイター』”
同テーマの台湾映画『スリングショット』に先を越された感もある、ほんとにあった“レース版『スター・ファイター』”。引きこもりウェールズ青年の逆転劇に、どこか丹下段平みある元レーサー(デヴィッド・ハーバー!)との師弟関係、圧倒的なライバルの存在など、「友情・努力・勝利」なスポ根ドラマ要素が満載。そこにメカフェチなニール・ブロムカンプ監督のクールな演出も相まって、ル・マン24時間レースまで引っ張っていく。『ロスト・イン・トランスレーション』感溢れるキラキラな東京のシーンもいいが、『第9地区』好きとしては、だったらブロムカンプ監督に『スターファイター』をリメイクして欲しかった感もアリ。
ゲームキッズもオヤジも心が燃える
面白い! 日産×プレステ企画「GTアカデミー」の映画化で、まさしく漫画のような実話もの。英ウェールズの青年がSIMレーサーから本物のサーキットへと、驚きの自己実現に乗り出していく。ゲーム的な映像デザインも施してあるが、基本はハイパーリアルアクション。ホビーと現実のmixの仕方など筆者の世代的には“コミックボンボンの世界”なのだが、『マリオ』に続く気持ちで観たら、むしろ『スラムダンク』に近かった、みたいな感じ。
監督はなんとニール・ブロムカンプ。本編を観ればメカフェチぶりなど至極納得。東京の街がこれほど輝かしく描写されたのも久々な気がするし、サバスにイギー、ケニー・G、エンヤなど選曲も快調。
ゲーマーがプロのレーサーになる実話の「驚き」を体験する価値大
プレステのゲームの直接的な映画化ではなく、天才ゲームプレーヤーが本物のプロレーサーになった物語で、その事実を知るだけでも観る価値アリの一作。集められた精鋭ゲーマーたちのユニークな合宿風景や競い合い、プロの洗礼など、とにかく舞台裏の面白さで魅せる。何かビッグな夢をもつ人には、その実現が身近に感じられる熱いドラマだ。
要所のサーキットのシーンも迫力だが、『ラッシュ』や『フォードvsフェラーリ』に比べ、多くの映像を編集で詰め込みすぎた感があり、もう少し集中して魅せてほしかった気も。
O・ブルームにカリスマ演技を求めるのは酷だが、重要な役だけにやや残念。どうせなら平岳大にもっと出番を与えてほしかった。