裸足になって (2022):映画短評
裸足になって (2022)ライター2人の平均評価: 4
アルジェリアの現実を伝え、ダンサー再生映画として温かみも
あまり映画で目にすることのない「アルジェリア」という国を知るうえで貴重な一作。イスラム社会における女性の立場は他の映画でも見かけるが、警察の犯罪への対応や、スペインへ行ってしまう友人との関係などは、本作だからこそ伝わるアルジェリアの現実。それら多くの不安要素に晒されながら、そして悲劇に遭いながらも、ダンサーとして新たな人生をめざすヒロインに共感せずにはいられない。
ダンサー映画としてもピエトラガラの本への傾倒、夕陽に輝く海辺での振付プロセスなど見どころはあちこちに。
社会派テーマで主人公再生とやや堅苦しいイメージだが、名曲「グロリア」の使われ方など作りはハリウッドエンタメ作品っぽくて観やすい。
我々に今必要なのは、この優しさと慈しみの精神だ
内戦終結から20年を経ても社会不安が続くアルジェリア。理不尽な暴力によってダンサーの「夢」も、自己を主張する「声」も奪われた若いヒロインが、似たような境遇の傷ついた女性たちとの交流に魂を救われ、やがて彼女らにダンスを教えることで生きる希望を取り戻していく。『パピチャ 未来へのランウェイ』の監督×主演コンビの最新作。歴史も宗教も文化も日本とは大きく異なる国の物語だが、しかし男性優位主義や同調圧力の強さなどは似ているように感じる。そうした中、虐げられし女性たちが団結して支え合い、互いの傷を癒していく姿は素直に感動的。世界中で不寛容がますます広がる昨今、我々に必要なのはこの優しさと慈しみの精神だ。