怪物の木こり (2023):映画短評
怪物の木こり (2023)ライター4人の平均評価: 3.5
あの絵本は実際に出版して欲しいなあ。
サイコパスと殺人鬼、それに対するプロファイラー。この三人の戦い自体はとても面白い。脳チップという、いささかSF的な要素も加わり、興味は持続する。殺人鬼とサイコパス、両者の過去もなかなかにおぞましく、サイコ・スリラーの条件は満たしているといえるだろう。しかし、吉岡里帆の見せ場が割合に少ないこともあって、いささか物足りない作品になっているのも事実。まぁ正直、三池崇史作品だから、本当はもっと凶悪で容赦なくあって欲しいところでもあり、その感は逃れえない。
ヤバい空気を湛えたスリラー
亀梨和也の鋭い眼光が、そのまま映画のまなざしとなっているような、危険な空気感。血塗られたバイオレンスを含めて、三池監督らしいヤバい映画を久しぶりに見た気がする。
猟奇殺人事件の謎に、人体実験を思わせる過去の秘密の出来事が重なり合うミステリー。それらを背景に置きながら、頭の切れるサイコパス同士のバトルが展開するのだから、物語のスリルは加速する。サスペンスとしても見応えあり。
亀梨はもちろん、盟友の犯罪者にふんした染谷染谷将太の怪演も光り、俳優陣が醸し出す緊張感もなかなかのもの。目の離せない、ギラついたスリラー。
仮面と絵本が別世界へ誘ってくれる
連続殺人鬼が被る"怪物の木こり"の仮面の造形と、それが登場する絵本の絵は、どこか土着の匂いも漂わせ、おとぎ話のようでいて禍々しく、なのにユーモラスでもある。この造形が、サイコサスペンスでもある物語に、ホラーとファンタジーの香りを纏わせる。
何かが起きたらしい過去の地下室はどこまでも湿って暗く、対比的に、サイコパスが殺人を実行する部屋は明るい日差しに満ちて、すべてが白く無菌室のようなクリーンさ。これらの強いビジュアルの力によって、ドラマは狭義のリアリズムから解き放たれて、フィクションならではの面白さを見せつける。三池崇史監督がプロダクションノートで語る「映画はフィクションですから」を痛感。
久しぶりの三池バイオレンス
三池崇史監督の2年ぶりの新作長編、三池監督にしてはびっくりするほど間が空いた感じがしますね。しかもここまでストレートなバイオレンスサスペンスとなると実はかなり久しぶりです。サイコパスVS連続殺人鬼ということで、諸々の描写については一切遠慮がなく、いたるところで血生臭いシーンが続くのですが、これをPG-12に納めている三池監督は流石ですね。”バイオレンス職人としての三池崇史”健在を感じました、演者で言えば主演から脇にかけて誰も高パフォーマンスを見せています。犯人探しという点では少しわかりやすいのですが、それでも楽しく見れました。