ヨーロッパ新世紀 (2022):映画短評
ヨーロッパ新世紀 (2022)世界の分断を「村」に圧縮した黙示録的傑作
原題の『R.M.N.』はMRI検査、さらにルーマニアを示すが、実質は邦題通りEU並びに世界の濃密な縮図だ。現代版『福田村事件』の趣もありつつ、色分けされた複数言語の字幕が分断の複雑さを映し出し、トランシルヴァニアの幻想的な風景が寓話のムードと強度を高める。
民主主義がポピュリズムや衆愚政治へと簡単にすり替わっていく様を捉えた17分間の集会はまさに圧巻。狂言回しとなる男マティアスは『エリザのために』(16年)の父親ロメオを受け継ぐ「空転する傷ついたマスキュリニティ」の批評的キャラ。これまでの集大成的な意味でもムンジウ監督の最高作だろう。『花様年華』と同じく『夢二』のテーマ(梅林茂)使用も驚き。
この短評にはネタバレを含んでいます