私がやりました (2023):映画短評
私がやりました (2023)ライター3人の平均評価: 4.3
風刺コメディとしても犯罪ミステリーとしても素晴らしく秀逸!
大物映画プロデューサーが自宅で殺され、彼からセクハラ被害に遭った無名女優マドレーヌが容疑者に。このピンチをチャンスに変えようと考えた新米弁護士の親友ポーリーヌの奇策で、マドレーヌは無罪を勝ち取ったばかりか女優としての成功も手にするのだが、そこへプロデューサー殺しの真犯人が現れて「勝利の分け前」を要求する。’30年代のフランスを舞台にしたレトロでポップで軽妙洒脱な犯罪コメディ。同じくフランソワ・オゾン監督の『8人の女たち』を彷彿とさせるが、しかし女性を二級市民扱いする男社会への風刺はより辛辣で、正攻法では勝ち目のない勝負に裏技を駆使して挑んでいくヒロインたちの知性と行動力と連帯にスカッとする。
ムードに包まれれば楽しくて仕方なく…オゾンの絶好調ぶりを実感
フランソワ・オゾンが今、絶好調であることを納得させる一本。作品のテイスト、ジャンルを軽やかに横断しながら、しっかりと世界観を構築。特に本作は、時代を遡ってスラップスティックコメディのノリを徹底。そこに#Me Too的な現代へのアピールをまぶしつつ、オゾンらしいさりげない同性愛的要素も散りばめ、楽しそうに映画を作ってる感が伝わる。
滑り出しはセリフの応酬などでちょっと面食らうも、そのムードに一旦乗っかってしまえば、登場人物たちの(いい意味で)大げさな演技が妙味に変化。中でもイザベル・ユペールの、周囲をコケにしながらも、とことん愛おしいサイレント時代の大女優っぷり、魅せられる人、多数だと断言!
オールドハリウッドをフレンチ流に遊び倒す!
冒頭の豪邸プールから『サンセット大通り』への目配せ。後半でI・ユペールが開き直ったG・スワンソンの如く登場するのに大笑い。ワイルダー作品では仏の監督デビュー作『ろくでなし』にもタッチ。全体の設計は『イヴの総て』を含む業界物にスクリューボールコメディの流儀をぶっこみ、『SHE SAID』的な#MeToo~シスターフッド系へ変換させたもの。お見事!
1930sと50sと今の時代性を繋ぐパロディックな映画遊戯。20世紀映画をファッション=コスプレとして愉しむミステリー風の軽喜劇で、人を喰った殺人事件の行方も洒落てる。『8人の女たち』『しあわせの雨傘』等に続く、オゾンの陽気な本領が発揮された逸品だ。