ドリー・ベルを覚えているかい? (1981):映画短評
ドリー・ベルを覚えているかい? (1981)のちの巨匠が無名だった頃の「原点」の輝き
1981年のクストリッツァ長編監督デビュー作が祝・日本劇場初公開。『黒猫・白猫』や『ウェデング・ベルを鳴らせ!』などへと後年昇華されていく個性は冒頭から満々。お話は童貞男子の通過儀礼。監督の自伝っぽい内容に思えるのだが、実は詩人A・シドランの小説が原作。時代背景はおそらく60年代初頭。性愛のドタバタやバンド練習など青春映画の王道の展開を辿る。
『おもいでの夏』的な初体験ものであると同時に、もうひとつ力点が置かれるのが父親との絆だ。マルクスを説く父親に対し、主人公は催眠術で対抗。ブルックス&クーエ著『自己暗示』の一節を唱えたりする。瑞々しく甘酸っぱく、やがて切ない。まさに1stらしい名作!
この短評にはネタバレを含んでいます