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エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命 (2023):映画短評

エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命 (2023)

2024年4月26日公開 134分

エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命
(C) IBC MOVIE / KAVAC FILM / AD VITAM PRODUCTION / MATCH FACTORY PRODUCTIONS (2023)

ライター3人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4

なかざわひでゆき

宗教と権威や権力が結びつくことの危うさ

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 裕福なユダヤ人家庭の幼い少年エドガルドが、「両親の知らぬ間にキリスト教の洗礼を受けていた」ことから、カトリック教会の法律に則って親元から無理やり引き離され、ローマ教皇のもとで育てられたという実話の映画化。近代的な自由主義思想の広まった19世紀半ばという時代背景も重要なポイントで、絶対主義の権化みたいなカトリック教会の影響力低下を危惧するローマ教皇の政治的な思惑が絡む。なんとも理不尽な話なのだが、しかし何よりもゾッとするのは、いわゆる悪人がひとりも出てこないことだろう。信仰の名のもとに善意で人権が踏みにじられる怖さ、宗教と権威や権力が結びつくことの危うさ。現代にも通じるテーマを描いた問題作だ。

この短評にはネタバレを含んでいます
猿渡 由紀

最初から最後まで感情に満ちた一大悲劇

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

なんとも痛ましい本当の話。見終わってからもしばらくやるせなさが心に残る。ユダヤ系の家族に生まれた6歳の少年が、くだらない理由で家族から引き離されてしまい、教会のお膝元でカトリック教徒として育てられていくのだ。宗教の名のもと、権力を使って誰かのアイデンティティを奪うとは本当に残酷。面会に来た母に「家に帰りたい」と泣きつく幼いエドガルドの姿には涙し、裁判のシーンでは思わず手を握るが、本当に強烈なのは終わり近く。イタリアの歴史上重要な時代を背景に、人に焦点を当てるこの映画は、ある意味オペラ的。両親にとっては時間との戦いでもあり、緊張感もある。84歳の大ベテラン、ベロッキオの手腕に拍手。

この短評にはネタバレを含んでいます
相馬 学

ローマカトリック残酷物語

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 19世紀イタリアの政教分離はその昔、世界史の授業で習った程度で、どんなものかは具体的には知らなかったが、そういう意味で興味深く観た。

 幼い子どもが親と引き離される。ユダヤ教徒の子と親それぞれが改宗を迫られる。改宗に応じた子と、改宗しない親との溝が深まる。これはまさに、カトリックが主権を握っていた時代の残酷物語。主人公の少年が、同じユダヤ人であったキリストの像に抱く幻想の描写も印象深い。

 時の教皇が聖職者らしくない横柄な態度をとっていることも脳裏にこびりつく。権力を握った人間が増長するのは、昔も今も変わらない。

この短評にはネタバレを含んでいます
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