流転の地球 -太陽系脱出計画- (2023):映画短評
流転の地球 -太陽系脱出計画- (2023)ライター3人の平均評価: 3.7
3本のドラマを軸に展開される怒涛の173分
日本では映画祭上映とNETFLIX配信止まりだった『流転の地球』の続編だが、じつは前日譚。それだけに、前作未見でも入り込める話であり、今度こそ大スクリーンで体感すべき173分の超大作である。前作のラストで壮絶な死を遂げたウー・ジン演じる宇宙飛行士リウと妻の出会いから描かれる家族ドラマに加え、死んだ娘を蘇らせるため狂人と化すアンディ・ラウ演じる研究者の親子ドラマ、リー・シュエチェン演じる中国代表が進める「移山計画」をめぐる政治ドラマが同時進行。宇宙エレベーターや地球エンジンなどのSF設定さえ把握すれば、3本のドラマを軸に展開される怒涛の展開に没頭できること間違いなし。
中国映画の技術力を見せつけられる壮大なSF冒険スペクタクル!
そう遠くない未来に予測される太陽系消滅から人類を救うため、地球そのものに1万基のエンジンを付けて太陽系から脱出させるという、壮大な人類移住計画を描いた中国産SFアドベンチャー映画『流転の地球』の前日譚。今回は前作の冒頭でサラリと触れられた、計画実行までの苦難の道程が描かれる。計画の妨害を狙った大規模なテロ攻撃に想定外の大惨事など、次から次へと襲い掛かる災難。VFXの圧倒的なスケール感とも相まって、およそ3時間の長尺もあっという間に感じられる。劇中ではアメリカと肩を並べる世界のリーダーとして描かれる中国だが、本作を見ていると映画の技術レベルは既にハリウッドを凌駕しつつあるように感じられる。
米版ドラマ「三体」を待ちながら
ベストセラーSF小説『三体』と直接の関係はないが、同じ作家リウ・ツーシンの短編小説『流転地球』を映画化したのが中国映画『流転の地球』(2019)。その前日譚を描くのが本作。ストーリーは映画オリジナルだが、リウ・ツーシンも製作に参加している。
とにかく時間も空間もスケールが大きいのは『三体』と同じ。100年後に老化した太陽が地球を包み込み、300年後に太陽系が消滅するという設定で、月を爆破し、地球自体の位置を移動させる計画が立案される。この規模の大きさには圧倒されるのみ。映画で描かれる2044年、2058年の宇宙船、移動手段、住居等のデザインは、中国の未来観を反映しているのかもしれない。