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Cloud クラウド (2024):映画短評

Cloud クラウド (2024)

2024年9月27日公開 123分

Cloud クラウド
(C) 2024 「Cloud」 製作委員会

ライター4人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.3

なかざわひでゆき

日本社会の今を映し出す寓話的な犯罪バイオレンス映画

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 主人公はいわゆる転売屋の若者。人の足元を見て安く仕入れた商品を、人の足元を見て高く売り捌く。違法スレスレだが違法じゃない。ゆえに本人も罪悪感など持ち合わせず、ただひたすら真面目にコツコツと「仕事」をこなす。その一方で彼に恨みを持つ人々がSNSで繋がり、やがてウェブ上で募らせた憎悪が現実世界での暴力へとエスカレートしていく。格差と貧困の拡大によって冷酷非情な弱肉強食の世界と化した、現代日本社会の殺伐とした風景を映し出す寓話的な犯罪バイオレンス映画。特にごく平凡な人々の憎しみがSNSを介して殺し合いへ発展していく様子は、昨今のウェブに蔓延するマイノリティ憎悪の行き着く先を予感させてゾッとする。

この短評にはネタバレを含んでいます
相馬 学

不穏が増幅して破裂する、スリラーの妙を味わう

相馬 学 評価: ★★★★★ ★★★★★

 誰にも感情移入できない物語という点は黒沢清監督作品らしさ。なにしろ菅田将暉ふんする主人公は冷徹な転売屋で、親しみの抱ける人物とは言い難い。が、話はそれゆえに面白くなる。

 主人公の冷徹さは敵をつくり、立場がどんどん悪くなる。そんなことを気にする様子もなく飄々としているうちに不穏な空気が増していく妙。スリラーを構築する巧妙な仕かけは、さすが黒沢作品。

 不穏という点では、知らぬ間に状況を支配する何者かがいるのもポイントで、そこにも黒沢作品の旨味を感じとれる。菅田はもちろん、フツーっぽいのに味のあるその助手にふんした奥平大兼の妙演も光る。

この短評にはネタバレを含んでいます
村松 健太郎

暴走する集団の憎悪

村松 健太郎 評価: ★★★★★ ★★★★★

黒沢清監督×菅田将暉という組み合わせだけでも惹かれる一本。共演陣もかなり豪華ですね。黒沢清監督作品は今年なんと3作品も新作があるというのはファンとしては嬉しい限りです。サスペンススリラーとして展開される前半とガンアクションが展開される後半とでガラッと雰囲気が変わる映画ですが、映画を通しての緊張感が変わらずあるので最後まで緊張感を感じながら見ることができました。嫌悪感、忌避感がやがて不特定多数による暴力に転換されていく様は現実の延長線上の事柄としてありそうで、必ずしも絵空事に見えないということを冷静に考えると怖いですね。

この短評にはネタバレを含んでいます
斉藤 博昭

ゾクゾクさせる名人芸 削ぎ落としの妙を感じる作劇&演出

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

鳥肌が立つのは直接描写ではなく、何かの「気配」。そんな黒沢清監督の真骨頂が前半で炸裂。(いい意味で)おぞましい展開への予感が充満し、主人公にどこまで共感していいのか、その危うさに観ている側は翻弄され続ける。
微妙な目の移ろいで心情を表現してしまう菅田将暉には恐れ入るが、大した演技をしていないように見せかけ、そこが効果的になる黒沢作品らしい演者の使い方が絶味。
通常の演出・脚本なら、重要な人物の「そうなるまでの背景」や、謎めいた行動の「真相」を描きたくなるはずが、そこは潔くカット。あくまでも“やりたい表現”で突っ走る姿勢は、シャマランと重ねたくなり、ツッコミどころも愛おしく、ちょいオマケの満点。

この短評にはネタバレを含んでいます
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