アビゲイル (2024):映画短評
アビゲイル (2024)ライター4人の平均評価: 3.3
主演の少女は「マチルダ」のあの子!
個人的に大好きな「M3GAN/ミーガン」のような、キッチュな傑作になれる潜在性はあったと思う。しかし、「M3GAN〜」のようにコンパクトに絞るのでなく、話を引っ張る中であっちこっちに行くせいか、トーンがぶれてしまった感じ。誘拐もののように始まったのに途中から違うものになっていくあたりは良いが、後半、人が次々に恐ろしい形で死に始めると、見覚えのあるものに。それらのバイオレンスは強烈ながら、心理的な怖さはない。キャストは豪華な顔ぶれ。アビゲイルを演じるのは、2年前の「マチルダ・ザ・ミュージカル」で評価されたアリーシャ・ウィアー。まったく違うジャンルとキャラクターに体当たりした彼女に拍手。
ヤバいのはヴァンパイア少女、だけじゃない
元ネタといわれる『女ドラキュラ』の現代版というよりも、「じつは最強でした……」映画の変化系。『マチルダ・ザ・ミュージカル』でブレイクしたアリーシャ・ウィアーの天才子役っぷりがヴァンパイア少女として引き出される。しかも、『M3GAN/ミーガン』に代表されるキャラ頼みで終わりがちのブラムハウス・プロダクションズ作品とは一線を画し、『ソウ』的人間関係ドロドロなシチュエーション・スリラーの要素もありつつ、『レディ・オア・ノット』の監督コンビらしい笑いとスプラッタ描写が相乗効果をもたらすデス・ゲーム映画へと昇華。伏線回収も綺麗だし、アンガス・クラウドの遺作ということで、★おまけ。
12歳の少女ヴァンパイアが血塗れのバレエを踊る
12歳のあどけない少女の姿をしたヴァンパイア、しかも白いチュチュでバレエを踊る。とにかくこの設定を活かした光景が続出、その美しくもおぞましいヴィジュアルが魅力。少女ヴァンパイアの殺戮は、舞踏の一部。下僕の身体を操り、自分の踊りにシンクロさせる。白いチュチュに真っ赤な血が滲んでいく。その血液には粘着力がある。監督は血塗れならお手のもの、『レディ・オア・ノット』『スクリーム6』のコンビだ。
出演者が意外(?)に豪華。『ゴジラxコング 新たなる帝国』のダン・スティーヴンス、『ザ・スイッチ』のキャスリン・ニュートン、『猿の惑星/キングダム』のケヴィン・デュランドらが楽しそうに演じている。
バレエ+ヴァンパイアという取り合わせが、とっても新鮮!
キーパーソンとなる12歳の少女が有望なバレリーナで、しかも吸血鬼らしいということで、その肉体を芸術的に操りながらの狂気の攻撃(不必要なターン、ジャンプに思わず笑ってしまう!)だけでも本作を観る価値アリ。「白鳥の湖」の使われ方など、バレエファンにもアピールしそう(怒る人もいるかも?)。演じたアリーシャ・ウィアーは、これまでスリラー、およびミュージカル作品で活躍していたので、その両面で才能を全開した印象。その分、集団で犯罪を起こす大人たちが、出番のわりに印象薄めなのは仕方ないか。
屋敷内での密室の攻防がメインなので、息が詰まるような閉塞感。しかもヴァンパイアものなので暗闇の効果も駆使される。