映画を愛する君へ (2024):映画短評
映画を愛する君へ (2024)
ライター2人の平均評価: 4
これぞ映画作家のオートフィクション!という醍醐味
トリュフォーのアントワール・ドワネルならぬ、ポール・デュダリスという分身的主人公がデプレシャンの映画=人生を駆け巡る。彼本人は『フェイブルマンズ』に触発されたらしいが、個人史と映画史の両軸を交差させ、愛する作品たちをロジカルに繋げた「引用の映画」となったのは仏の監督らしいクリティカルな構成だ。
セレクトからは自由で柔軟な映画観が窺えつつ、ランズマンの『ショア』、デプレシャンの『ジミーとジョルジュ』にも出演したミスティ・アッパムの『フローズン・リバー』など大切なタイトルは特権的な位置に置かれる。ポール役は4人の俳優によるバトンリレーが展開。観客各々にとっての「私」へと拡張される試みも素敵だ。
さながらアルノー・デプレシャン版『フェイブルマンズ』
『そして僕は恋をする』と『あの頃エッフェル塔の下で』に登場したアルノー・デプレシャン監督の分身ポール・デダリュスの少年~青年期に、監督自らの若き日の映画体験を投影した半自伝的映画であり、なおかつ一般映画ファンへのインタビューなどのドキュメンタリー・パートとドラマパートで構成されたドキュドラマ映画でもある。さながらデプレシャン版『フェイブルマンズ』。そこへさらに監督の愛する映画群の名シーンが挿入され、映画文化そのものへの深い愛情が綴られるわけだが、リュミエール兄弟やグリフィス、ヒッチコックやトリュフォーなどはもとより、キン・フーやレニー・ハーリンまで引用していくラインナップの幅広さに驚く。