メンゲレと私 (2021):映画短評
メンゲレと私 (2021)思考とアイデンティティを奪う戦争の真の怖さ
証言者は、ホロコースト証言シリーズ3部作の中で最も若い9歳〜13歳にゲットーや強制収容所で過ごしたダニエル。メンゲレ医師の非人道的極まりない人体実験やカニバリズムなどを目撃し、その証言を裏付けるかのようにアイヒマン裁判の映像や米軍通信部隊が撮影した記録映像が差し込まれる。情報として知ってはいたとしても、その目が、その顔に刻まれた深い皺が、忌まわしい記憶を生涯抱えながら生きざるを得なかった者の苦悩を生々しく伝える。だが最も印象深いのは解放直後のこと。紙に絵や文字を思う存分書き、そこで自由を感じたという。自由であるはずの私たちに、深くその意味を問いかける言葉である。
この短評にはネタバレを含んでいます