コットンテール (2023):映画短評
コットンテール (2023)ライター2人の平均評価: 3
国境を越えた普遍的なテーマ
コミュニケーション力があまりない不器用な夫、なんでもきっちりと考えている優しくてよくできた妻。そんな夫婦の形は、日本でも、イギリスでも、おそらくよくある光景。愛する人が亡くなった時、その悲しみをどう乗り越えるのかは人それぞれで、そこにもまた国境はない。この映画では、リリー・フランキー演じる主人公、錦戸亮演じる息子、キアラン・ハインズ演じる旅先で出会う男性が、違う形でそこに向き合う。日本に滞在経験もあり、日本語ができる若いイギリス人監督ならではの作品。細かい部分にやや気になるところもなくはないが、人間愛と誠意から生まれたのはたしか。今作でデビューした彼が次にどんな映画を作るか楽しみ。
共感しやすい家族ドラマながら、かなり不思議な感覚も
イギリスと日本の合作だが、キャストを眺めると「日本映画色」が濃厚。それぞれの役の感情も日本人の目線で違和感がない。その感覚で観ていると、物語の流れや、シーンとシーンのつなぎ、人物の時に唐突な言動で、どこか妙な違和感にも襲われる。日本に留学経験があるイギリス人監督の初長編というのが、そうした「感性」に表出したようで…。
時代は特定されないが、スマートフォンではなくガラケーが多用され、少しだけノスタルジックな空気が漂い、そこにリリー・フランキーと錦戸亮の佇まいがしっくりハマる。おとぎ話のような温もりの中に、題材が題材なだけに、突如として生々しいまでの壮絶描写が入り込んできて、ちょっと驚いたりも。