ザ・ルーム・ネクスト・ドア (2024):映画短評
ザ・ルーム・ネクスト・ドア (2024)演技とルックは美しく、テーマは異例なほど真っ直ぐに。傑作!
これまで何度も「死」を扱ってきたアルモドバルだが、本作は限りなく死をポジティブに捉えようとするスタンス。気を衒わず、安楽死という深刻極まる要素に真っ直ぐ向き合い、驚くほどストレートに心に突き刺さる作風となった。死を見守る側(家族や恋人でないのがむしろリアル)の切実さ、恐怖も痛いほど伝わる。
自分の運命は自分で決める。そんな心情を時に頑固に力強く、時に迷いも垣間見せて表象するT・スウィントンは神々しいほど。結末の後の余韻が、ここまで静かに長く続く作品も珍しい。
美術や衣装のカラーが、アルモドバル作品の中でも特段の鮮やかさに感じるのは、それでも現世を生き続ける素晴らしさを密かに訴えているかのよう。
この短評にはネタバレを含んでいます