満ち足りた家族 (2024):映画短評
満ち足りた家族 (2024)ライター2人の平均評価: 4
子を持つ親なら間違いなく頭を抱える傑作サスペンス
名優ソル・ギョングとチャン・ドンゴンが兄弟に扮する「家族」と「倫理観」をテーマにしたサスペンス。善悪を相対的に捉えている弁護士の兄と、人助けを何より大事に考えている医者の弟。何不自由なく暮らしている彼らが大切にしている子どもたちの秘密に直面し、それぞれが煩悶することになる。子を持つ親が本作を観れば、彼らと同じように「自分ならどうする」と頭を抱えるだろう。何をすれば正しくて、何をすれば間違っているのか。子育ても社会的な倫理観を貫くのも、どちらも途轍もなく難しい。さまざまな要素が反転しながらつながっていく精緻な脚本と、ホ・ジノ監督による静けさと激しさが小波のように寄せては返す演出が見事。
韓国映画としてのアレンジが肝
リチャード・ギアとスティーヴ・クーガンが兄弟を演じた『冷たい晩餐』と同様、「倫理観」をテーマに描いた小説の映画化だが、その出来は雲泥の差。それもそのはず。4度目の映画化となる今回の韓国版は、キャラ設定など、イタリア版(『われらの子どもたち』)をベースにしているうえ、教育や介護といった韓国社会における問題点も巧く取り入れるなど、かなり意欲的な作りになっている。ホ・ジノ監督といえば、ラブストーリーのイメージが強いが、今回は繊細な心理描写を際立たせ、事件の加害者となった我が子を守ろうとするソル・ギョングとチャン・ドンゴンの駆け引きをスリリングに捉えている。