夜に生きる (2016):映画短評
夜に生きる (2016)ライター2人の平均評価: 3.5
ベンアフらしさが色濃く出たピカレスクロマン
クライム・ノベルをハードボイルド映画として成立させるベン・アフレックにとって、これ以上にない題材。『ゴーン・ベイビー・ゴーン』に続くルヘインの小説の映画化だが、『ザ・タウン』と並べても違和感のないピカレスクだ。
ギャングの栄光と失墜を描いている点では『グッドフェローズ』を連想させなくもないが、ゾーイ・サルダナとの恋愛模様に重きを置いているぶんロマンの味は色濃い。
前3作に比べると進行は淡々としているが、情感の抑制というハードボイルドのひとつの味と取れなくもない。非監督作『ザ・コンサルタント』に続き、ベンアフはアンチヒーロー役者としてもイイ味を出している。
極悪非道に染まりきれない男が生き抜く感傷的な擬似ギャング映画
禁酒法から大恐慌へ。20~30年代アメリカ「狂騒」の美意識は眼を楽しませる。ならず者がしのぎを削る、既存のノワールとは一線を画す。ベン・アフレック扮する男は、支配されることを拒んだ挙げ句、裏社会で自分の掟の下に生き抜こうとする。極悪非道に染まりきれない彼の表情は、反社会的というよりも、どこか厭世的。そんな主観が極められれば異色作になったはずだが、演出スタイルはあくまでもクライム映画風。ゆえに、権力や美女をめぐるロマンに欠ける、感傷的な擬似ギャング映画に見えてしまう。闇に生きる面々が役不足なのも痛い。アフレック監督作を愛する者としては、いくらでも擁護のしようはあるが、決して成功作とは言い難い。