バーフバリ 王の凱旋 (2017):映画短評
バーフバリ 王の凱旋 (2017)ライター3人の平均評価: 4
ハリウッド超大作5本分のエキス!パッション1000人分配合!
所詮インドのエンタメは大仰すぎる…というシニカルな視線も踏まえている。自虐的にならず、極めて健全に、その先にある「過剰」を目指して突き抜けたインド映画の到達点。ストーリーなど追わず、ただ圧倒されればよい。男性の肉体美が躍動し、女性は優雅に歌い踊る。銀幕の可能性を追求するダイナミックなアクション。てらいなく激しく愛し合う美男美女。あまりにも純粋で完全無欠の映画の姿には、驚きを通り越して微笑むしかない。この映画に相応しいのは、栄養ドリンク的なキャッチコピーかもしれない。「ハリウッド超大作5本分のエキス!」「エンタメ濃縮還元!」「パッション1000人分配合」。無心になって一大叙事詩をご堪能あれ。
今年の最高傑作がついに完結!
カッと目を見開いた女性が赤ん坊を乗せた片腕を川面に突き出す姿に身を乗り出した前作の冒頭で感じた予感は、間違ってなかった。傑作だ! 歌と踊りにドラマティックな展開を踏襲しながらも、ロケット級に突き抜けていく。この映画の素晴らしさのひとつが強い女性で、主人公バーフバリが愛する姫は弓矢の名人! 乱入した敵を前にジョン・ウー作品風なコンビネーションで弓矢を放つ二人がかっこいい。巨悪を焼き殺すために小枝を集める女だもんなと納得。椰子と盾を使っての人間ロケットなんて想像を絶するアクションに目を見張るクライマックスのカタルシスったら、もう。おバカ映画とディスってもいいけど、心をオープンにして楽しんでほしい。
インド娯楽映画とハリウッド叙事詩映画のいいとこ取り!
インドの伝説的物語を、インド娯楽映画の様式美はそのままに、「ロード・オブ・ザ・リング」の格調と演出法を掛け合わせ、さらに「300」のド派手VFXアクションを加味するとこうなる。絢爛豪華、感情過多、誇大表現、何もかもが度を越している。
前編よりもシリアスなシーンと戦闘が増え、インド映画の極彩色の色調は少なめだが、例えばヒロインの登場時、シルエットの形で出現するその姿の、長いマツゲのカーヴの曲線にも、インドの様式美がくっきりと刻印されている。「ロード・オブ・ザ・リング」が確立したハリウッド式叙事詩映画の表現技法を積極的に取り入れながら、細部までインドの美意識を貫く。その姿勢も気持ちいい。