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KANO ~1931海の向こうの甲子園~ (2014):映画短評

KANO ~1931海の向こうの甲子園~ (2014)

2015年1月24日公開 185分

KANO ~1931海の向こうの甲子園~
(C) 果子電影

ライター4人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 5

中山 治美

文句なしに胸を打つ、演技を超えた汗と涙

中山 治美 評価: ★★★★★ ★★★★★

『海角七号 君想う、国境の南』、『セデック・バレ』の魏徳聖監督が製作・脚本を手掛け、三度日本統治時代の史実を基にした大作。各作品とも負の側面だけでなく、そこには確かに人種を超えて育まれた交流もあったことを紡いでいるが、最たるがコレ。甲子園の歴史に刻まれる日本人・漢人・原住民の混成チームで躍進した嘉義農林野球部の奇跡を、1931年の彼らそのままに野球経験者の混成キャストで時間をかけて作り上げた。その負荷は確実に画面に表れており、汗も涙も泥もぐっちゃぐちゃになって試合に挑む野球シーンは、澱んだ心を浄化させてくれること間違いなし。こうして結ばれた絆の一つ一つが今に繋がっているかと思うと一層感慨深い。

この短評にはネタバレを含んでいます
ミルクマン斉藤

駅には日本兵として送られるセデック族らしき姿も。

ミルクマン斉藤 評価: ★★★★★ ★★★★★

後半をほぼ占める、愚直なまでに力のこもった試合シーンは手に汗握るが、それも前半じっくりと三民族混成のチームが熱血監督によって心をひとつにしていくさまが描かれてこそ。語り手が途中で移行するのも巧みなところ、前半はもちろん嘉農の人々の目で綴られるが、中盤にライバル札幌商の錠者投手(青木健、快演!)が嘉義の地を訪れるくだりから物語ははっきり彼の回想という形になる。ライバルの目を通すことで物語が立体的に見えてくるのだ。なおここで描かれる日本統治下台湾はユートピアに近い。それが反日派の反感を招いたとも聞くが、『セデック・バレ』と併せ観ると魏徳聖らはその時代の諸相をそのまま掬おうとしているのが判るだろう。

この短評にはネタバレを含んでいます
なかざわひでゆき

日本統治時代の台湾を知る上でも必見の野球映画

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 日本統治時代の台湾を舞台に、現地の弱小高校野球チームが甲子園での決勝戦出場を果たすまでの実話を描く。
 3時間を越える長尺を全く感じさせないストーリー運びは見事。中でも、野球経験をもとに選ばれた若手俳優たちによる試合シーンの迫力は圧倒的だ。厳しくも愛情あふれる鬼監督・永瀬正敏との熱い絆のドラマも胸にグッとくる。
 平和でのどかな日本統治時代を郷愁たっぷりに振り返るという点で、もしかすると賛否が分かれるかもしれない。だが、いつの時代にも光と影があり、どちらか片方だけを見ていては歴史を理解できまい。抗日暴動事件を描いた「セデック・バレ」の次に、この題材を選んだ製作陣の意図もそこにあるはずだ。

この短評にはネタバレを含んでいます
くれい響

これが本当の野球映画だ!

くれい響 評価: ★★★★★ ★★★★★

一瞬尻込みしてしまう上映時間185分。事実とはいえ、鬼監督に導かれた弱小チームが甲子園に出場する、決して斬新といえないストーリー。にも関わらず、これがまったく飽きさせないから驚きだ。演出はベタかもしれないが、それも味になって、じつに流れるようなテンポで胸に迫ってくる。特筆すべきは野球経験者による嘘のない試合シーンで、そこにたっぷり尺を使う新鋭マー・ジーシアン監督のスゴさ。プロデューサーのウェイ・ダーションより才能があるのを認めざるを得ない。徹底的にチームの団結力を描き、各選手の印象は永瀬正敏演じる鬼監督のインパクトに押され気味だが、知らず知らずに「天下の嘉農」を応援してしまうはず!

この短評にはネタバレを含んでいます
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