劇場版 岩合光昭の世界ネコ歩き あるがままに、水と大地のネコ家族 (2020):映画短評
劇場版 岩合光昭の世界ネコ歩き あるがままに、水と大地のネコ家族 (2020)ライター3人の平均評価: 3.7
猫と共存する当たり前の暮らし
居着いたきっかけこそ、格好のエサがあったからに違いない。舞台になるのは北海道の牧場と、ミャンマーの湖上の高床式家屋。前者の猫はミルクを、後者は漁で得た魚のおこぼれをちゃっかり頂く。時に人間の仕事の邪魔をしながら。でも人は猫を拒まない。ミルクも魚も自分たちのものではなく地球からの恵であり、そこで生きる者同士で分け合うのが当然だという考えが根付いているからではないだろうか。人間と動物が当たり前のように共存する温かで、豊かなひととき。日々の生活で見失いがちな他者を愛しむという心を、岩合監督の映像はいつも教えてくれる。
中村倫也のにゃんこ愛がダダ漏れ
今やキャットフードのCMにも出演する写真家・岩合光昭が監督・撮影を務めた「劇場版」第2弾。ケガが治るまで、みんなのところに戻らないプライドを持つボス猫や水辺での暮らしに対応していく子猫など、可愛いだけじゃないにゃんこの生態を、優しく温かいまなざしで見つめるが、まるで彼らで話しかけているような距離感の中村倫也のナレーションが絶妙すぎ。思わず「ふふっ」と笑ってしまう語り口は癒し効果だけでなく、朝ドラ「半分、青い。」の1シーンも思い起こさせ、吉岡里帆がナレーションを務めた前作と異なる印象も!
新春早々にニャンという癒しの映画だ!
もはや猫カメラマン(実際は動物写真家)として認知されている岩合光昭が猫たちにレンズを向けたドキュメンタリーは、猫好きでなくても見る人の心の奥にぽおっと温かな火を灯す。フォーカスされるのは、北海道の乳牛牧場で暮らす多数の猫とミャンマーの湖上家屋に住む一家の猫たち。親の指導で子牛との共存を学ぶ子猫がいれば、母離れができないオス猫もいる。生まれてすぐに湖に落下して母猫を心配させる猫も成長するや見事な泳ぎを披露。それぞれの土地と自然に応じて逞しく成長する子猫の姿や猫の家族愛に見入ってしまう。中村倫也のほのぼの感たっぷりのナレーションもとてもいい。